1 きれいなおねえさんが迎えに来た

 そんな訳だったので、俺はちっとも(言い過ぎだな、まあまあってとこ)驚かなかった。

 学校帰りに魔法陣が道に突然現れて、金髪・赤いドレスのきれいなおねえさんが地面から湧き上がって来て、俺の前で片膝をついても。

「王子様。お迎えに上がりました。私と一緒に参りましょう」

 むしろ驚き、興奮しまくったのは、一緒にいた友人A・B・Cだった。

A「すげえじゃん、悠! あの夢マジだったんじゃん! 王子、すげえ!」

 俺は夢の話をみんなによく話していたのだ――「異世界? 空想だろ、映画とかドラマの影響だよ」「いやほんと赤ん坊のころから見てた夢なんだって!」「じゃあ親が観てたのが刷り込まれたんだよ、胎教とか?」「ほんとだってほんとだって!」「分かった分かった(笑・頭ぽんぽん)」――という反応ばかりだったけれど。

B「ほんっとすげえ! ねえ、おねえさん何歳?」

 きれいなおねえさんは、片膝ついた勢いのせいでドレスがまくれて太ももが見えそうなのだ。

C「まじかあ、でかい杖持ってるよ。なんかレーザー出してください!」

「さあ王子様!」

 きれいなおねえさんは、友人たちの言葉を無視して立ち上がると、俺に杖を持っていない方の手を差し出した。「時間がありません! 参りましょう!」

「あ、ああ、はい」

 おねえさんの気迫がすごかったから、俺は思わずその手のひらに自分の手を置いた。

 二人で魔法陣の真ん中に立つ。

A「行ってらっしゃい!」

B「おねえさん、よければ次、僕で!」

C「おみやげよろしく! 杖、杖な!」

俺「じゃあちょっと行ってく……」

 魔法陣が赤く輝いた。

 途端、体が下に引っ張られる感覚がして……。


 そこはもう異世界だった。

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