リア充なイケメン高校生の様子おかしい【キシケイト氏の作品】

【まず最初に】


 話の進行をする羽鐘司令の言葉は「」、スマホ少尉の言葉は『』で表示します。


 ――――――――――


 第十二回

 作戦名 :リア充なイケメン高校生の様子がおかしい

 支援作品:死神探偵の事件簿

 作品著者:キシケイト


 羽鐘が、パソコンのモニターの前で難しい顔をして腕組みをしている。

 普段であれば『司令、キモいです』と茶々を入れるところであるが、珍しく何も言わず困惑しているかのように通知ランプを明滅させている。


「さて、問題作だ」

 羽鐘が重々しく告げた。


『司令の気持ち、わかります』

 スマホは素直な相槌を打った。

 こういったシチュエーションにおいては、約2ヶ月ぶりのことである。


「この作品、私が現段階で追いかけている最新の話は、10月3日、まさに今日だ。しかし、最終話は6月5日に公開され、私は8月13日に読んでいる」

『記録と照合しましたが、間違っていません。どういうことでしょう?』

「答えは簡単だ、物語はまだ続いているからだ」

『それは一体、どういう……』

 スマホは混乱していた。

 最終話があるのに続いている?

 羽鐘の頭の悪さが限界突破したように思えた。


「まず、ざっくりと物語の内容を説明しよう。主人公は杉浦月下げっか、そして大沢ユリカ。この二人と言っていいだろう。二人が通う高校で事件が起こる。女子高生が二人死ぬ」

『ミステリーですね。一体なぜ?』

「赤い死神に遭遇したから、とでも言っておこう。最初に亡くなったのは屋上からの飛び降り、二人目は……殺された」

『女子高生を死なせるなんて、犯人はなんて不届き者でしょう!』

「随分と女子高生に肩入れするな……。しかし、この事件の前から、主人公の様子がおかしくなる。その原因となるのが、とある朗読会だ。その朗読会で佐藤流星が話した内容が問題だ」

『その、内容とは?』

 スマホは緊張を演出するため、ごくりと唾を飲む音を出した。

 意外と芸が細かいなと、羽鐘は感心した。


「ハッキリとしない。ただし、一つだけキーワードを挙げるとするならば、『赤い死神』だ」

『赤い死神……不気味な響きがしますね』

「そうだろう? ミステリーなのでネタバレ厳禁なので詳しい言及は避けるが、なかなかホラー展開があって、忍び寄るような恐怖感を味わいながら話を読み進められるのがいい」

 羽鐘は自分で言って自分で勝手に恐怖を覚え、ぶるりと震えた。


『それで、話が続いている、とは?』

 スマホが重要なことを聞いた。


「我々は、物語の結末に向けて読み進める。読者体験とはそういうものだ。しかし、この作品はウェブ小説である強みを活かし、最終話を提示しつつ、物語の核を後で語っているんだ。紙媒体では不可能な手法だな」

『確かに面白い手法ですよね? 司令が読み進めていた段階ではスムーズな展開でしたが、その後の公開情報でかなり驚かされてましたね』

「予想できたところもあるが、驚きも強い。これはリアルタイムで追えていたからこその至福の読者体験ではあるが、普通に読んでも面白いから素晴らしい」

 羽鐘はさりげなく他の読者へのマウントをしたようにスマホには思えたが、羽鐘はそうなってるとは気付いていない。


『そう言えば、この話のタイトルがリア充なイケメンとなってますが、司令は嫉妬の炎に身を焼かれませんでしたか?』

「焼かれたよ。消し炭になったよ。普通に月下とユリカはイチャコラするし、共学なのに女子生徒がいなかった高校時代を過ごした私にとっては信じられない展開の連続だったぞ」

 羽鐘は、泣いていた。

 拳を固く握りしめ、泣いていた。

 流れる涙は、美しくなかった。


『読者を引き寄せるミステリーにウェブ小説ならではの読ませる手法、それに司令が嫉妬に狂いそうになる描写。他の生徒たちも生き生きと動いているのに、何故、問題作なのでしょう?』

 スマホは、その理由を知っている。

 だが、あえて聞いた。


「うんとね、概要欄に、ネタバレ書いてるの。ほぼ全部。概要とはいえ結構丁寧に。ビックリした」

『驚きますよね……。かなり工夫された手法を用いていながらも、ネタバレしちゃう親切設計。ある意味読者が離れそうです』

「だからこそ、支援に値するのだよ。こんな作品、滅多にないぞ!」

『そうですよね! 支援砲、発射準備します!』



 あまりに度肝を抜かされる、ミステリーとネタバレを両立させた作品への敬意を示しながらも支援するため、応援ハートの一斉射撃を令した。

 無事に作品が支援されることを祈りながら。



 次回予告

 作戦名 :蹴ればいいじゃない?勝てるから

 支援作品:異世界仮面~無貌の英雄、『蹴聖』を背負う~

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