第23話

運営からのメッセージではこうなっていた。

『お願いしたいことがあるので指定の場所でお会いできませんか?』

アラタは少し悩んだ末、返信を送る。

『構いませんが、お願いとは何ですか?』

『詳細はお会いしてからお話します』

そう返信が返ってくると端末の指定場所が送られてくる。

どうやら、その場所に行くしかないようだ。

アラタは端末を頼りに指定されたポイントに向かった。

「ここか・・・。飲食店かな?」

アラタは取りあえず中に入る。

「いらっしゃいませ」

店員がすぐに声をかけてくる。

「人と待ち合わせなんですが・・・」

「お名前をお聞かせいただいても?」

「アラタといいます」

「アラタ様ですね。今、お席にご案内いたします」

店員に案内された先には女性が待っていた。

女性は立ち上がると頭を下げてくる。

「今回はお呼び立てして申し訳ありませんでした」

「いえ。それでお話というのは?」

「まずは何か注文しませんか?」

「注文ですか?」

「はい。ここは飲食店ですので。あっ。お代はもちろんこちらで持ちますので」

アラタは取りあえずメニュー表を開いてみる。

そこには見慣れた物からよくわからない物まで存在していた。

「コーヒーとチョコレートケーキをお願いします」

「無難な選択ですね。冒険心が足りてませんよ」

「いやいや。失敗したら怖いじゃないですか」

「それもそうですね」

そう言って女性は引き下がる。

注文した品はすぐに運ばれてくる。

アラタは取りあえずコーヒーを飲んでみる。

「あっ。味覚も普通にあるんですね」

「はい。そこもこだわった部分ですから。プレイヤーの中にはゲーム内での食事を楽しみにしている方もいますよ」

「なるほど・・・」

かかるのはゲーム内マネーだ。

普段食べられないような物を楽しんでいる人もいるのかもしれない。

「では、改めまして。GMをやらせてもらっているアヤセと申します」

「アラタです。それでお話とは?」

「はい。アラタさんのプレイ動画を公式の動画として公開させていただけないかという相談です」

「自分のプレイ動画をですか?」

「はい。アラタさんは現在、星屑の勇者達のトッププレイヤーです。トッププレイヤーであるアラタさんの活動を通じてゲームの宣伝をしたいんです」

「趣旨は理解できますけどメリットってあります?」

「はい。もちろんありますよ。使わせていただけるなら契約料として1000万円ほど振り込ませていただきます。後は、再生数に応じて追加でお支払いさせていただければと・・・」

「円ということはリアルマネーですか?」

「はい。その通りです。受けて頂けませんか?」

生活費のことを考えればかなり美味しい話ではないだろうか?

ゴールドランクに上がるのはまだまだ先であることを考えると将来の不安を解消できる。

手の内を明かす不利もありそうではあるが悪い話ではなさそうだった。

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