第14話 そうだ、お掃除だ!
「ちょっと、シスカ。何なん、あのメガホン野郎は。うるさぁてかなわへんのやけど。どうせアンタの知り合いなんやろ」
翌日、登校中のシスカは、学校に着く少し手前で、ノエルに呼び止められた。
「は? メガホン野郎って……」
「あれや、あれ」
ノエルの指さす先には、「あいさつ運動実施中」とかかれたきらびやかなはっぴ姿の、サキがいた。メガホン片手に、近所迷惑な大声でがなっている。
「みなさんっ! おっはようございまぁ~っす!!」
「知り合いじゃない……他人なの」
ぺたん、と耳をふさいでしらをきるセレナは、昨日言ったことをちょっぴり、後悔しているかもしれなかった。
☆ ☆ ☆
学園のみんなにちょっとヘンな目で見られながらも、善行パーティ「タメナラ!」の活動は続いている。
「ねぇ、シスカちゃん。イイことって、ゴミ拾いやあいさつや募金活動の他にも、何かないかなぁ」
拾ったゴミの量などをグラフにしてつけているノートを見ながら、セレナが言った。
日曜日の今日も、シスカの家で作戦会議中なのだ。
「そうね。梅雨入りしたおかげで、このごろ、外での善行はやりにくくなってるし」
シスカも、それはちょっと気になっているところだった。
「マリヤルちゃんはどー思う?」
セレナは、死に神にも意見を求める。
おたがいの事情を包み隠さず話しあったときに、シスカが、カタツムリのぬいぐるみにとりついているマリヤル・ハデスのことも紹介したのだ。魔界と死に神の世界で接点はないものの、セレナとマリヤル・ハデスは同じ年の生まれだということが分かって、意気投合していた。若く見えるが、二人とも百年以上生きているらしい。「十五歳」になるのを恐れて、セレナは、十三歳で成長を止めたままで今日まできている。
「そうだねぇ。あたしはもともと、善行とは無縁の人生送ってきたから……」
「あぁっ」
最近気に入って寝床にしている棚の中から出てきたカタツムリを見て、シスカが声をあげた。
「マリヤルちゃん、緑のドット柄になってる」
セレナも目を大きく見開く。
「え?」
確かに、青だった殻の部分に、緑の模様みたいなのが入っていた。
「これってもしかして……」
「カビじゃない? じめじめしてるから」
シスカとセレナは、小声で言い合った。
「え、なに? どうしたのよ」
「い、いいから! ちょっとじっとしてて!」
いぶかるマリヤル・ハデスに、シスカは除菌スプレーをかけた。
「うわっ、ちょっ……げほげほっ」
何するんだ、と言う彼女を押さえて、熱いお湯につけたぞうきんでカビをふきとる。
「ふう、これで終わり」
「やだよね、梅雨時は湿気であちこち汚れるから。魔界にはこんなの、なかったんだけど」
「……いっそのこと、掃除のボランティアでもしたらどう?」
「「なるほど……」」
死に神の提案に、シスカとセレナは、顔を見合わせてうなずいた。
「お年寄りとか、広いお屋敷に住んでる人とか、お掃除を手伝ってほしいと思ってる人、きっといっぱいいるよね」
「さっそくポスター作って、ネットでも宣伝しよ」
絵のうまいセレナがイラストを描いて、完成したものを街中に貼り、ホームページでも広告を出したら、一週間もしないうちに、申し込みの電話がかかってきた。
「ことのは町三丁目にすんでるおばあさんから、明日の三時に来てほしいって」
「了解。日曜だし、夜までかかってもぴっかぴかにするわよ!」
「……自分の部屋もろくに片づけられないくせに」
ぼそっといやみを言った死に神の言葉どおり、シスカの部屋はあまりせいとんされていない。拭き掃除もはき掃除も苦手だし、善行しないと十五で死ぬ運命じゃなければ、掃除のボランティアなんてごめんこうむりたいくらいだ。
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