第13話 決意
「すごい…、魔法みたい」
魔界の支配者の娘に生まれついたセレナが、目をぱちぱちさせて驚いている。
異変に気づいて振り返ったサキは、その姿に一気にでれっとなった。
「どうしたんですかぁ、セレナさん。そんなかっこして。あ! もしかして、もうここで今すぐ結婚式あげる気になってくれたんですか?」
「……違うから」
冷めた声で否定して、セレナは、サキにフォークをつきつける。
「シスカちゃんを離して。で、おとなしく魔界に帰って。わたしは、世界一の悪女になんかならないの。優しい心で、いつか、魔界を変える」
フォークの先には、決意を形にしたような光が集まっている。
シスカを離さなければ、これでつらぬくことも辞さないということだろう。
サキは悲しそうにまゆを寄せ、シスカのスプーンとかみあっていた剣を引いた。
「だいじょうぶ? シスカちゃん」
緊張から解放されてふらっとくずれたシスカを、かけよったセレナが抱きしめる。
「だいじなこといっぱい、だまっててごめんね……」
ごめんですますには規模が大きすぎるけど、と付け足してわびるセレナ。
シスカは首を横に振った。
「ううん、私も、まだ話してないこと、たくさんあるから」
友達なら、大切なことはぜんぶ、かくさないで伝えておかなきゃ。
二人は、キセキの力が切れて元の姿にもどったところで、顔を見合わせて笑いあった。 ふと思い出したように振り返って、セレナは、まだ落ち込んでいる様子の婚約者に近づく。
「わたしといっしょに、みんなが幸せな世界を作ってくれるなら、約束どおり結婚してもいいよ。人間の世界で、善行を積んで優しい人になれたら、わたしも安心して年をとれるから。サキもがんばって、意地悪じゃない十五歳になって、二人で魔界を変えようよ」
おっとりしたほほえみを浮かべて、誘う。
「セレナさぁああん……」
美人のセレナにベタぼれらしいサキは、鼻水をすすりあげて、大きくうなずいた。
「とりあえず、丸く収まってよかったな」
今回少しだけ手を貸したマリヤル・ハデスがシスカの耳元で言う。
「うん、まあねっ」
時計を見ればすっかり真夜中で、シスカは思わずあくびを一つした。
ソファで寝るつもりだったけど、「いっしょに」と誘うセレナに負けて、ひとつのベッドで朝までぐっすり眠った。
深いつきあいの友達がいなかったシスカには、初めてのことだった。
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