飛沫のサジタリウス

めいき~

プロローグ

 公募の一次通過者の名前と作品名が発表された。ブラウザでページを開き、検索窓に自分が応募した作品名を入力。エンターキーを押せば答えが出る。



 だが、指が震えて手が止まった。


 そう言えばとわざとらしく、一度、手を洗面所に洗いに行き。水をコップに注ぎ一気飲みした。自分の頬を両手で叩いて気合いを入れ。今度は作品名ではなく、自分のペンネームを入れた。「モーシヌっと」


 カチッとメカニカルの乾いた音が翼の耳に入ってくる。そして、無常にもカーソルは何の反応も示さなかった。


 そう、モーシヌの作品は柑橘賞一次通過ならず。


 翼は落ちたのだ。


 頭を抱えて、悶え。そして、そういえばと思い。リアル親友の裕子のペンネームを入力した。


 通ってるわけない、私が落ちたんだから。


 でも調べずにはいられず。キーボードを叩いた。


「豚足(とんそく)っと」実物を知ってると、大根ぐらいがちょうどじゃないかしら。毛深いしと思いながら。


(あっ………有るっ!)


 速攻で、スマホを取り出し流れる動作で裕子の番号をタップ。「もしもし!」興奮気味に叫ぶ。ちなみに、今は夜の十一時だ。


「裕子、一次通過おめでとう!」祝福の言葉を翼がいうと。「ありがと、でもアンタ今何時だと思ってんのよ。明日でいいでしょ」


 ガチャと電話が切れる音がして、翼の目がごま塩の様な点になる。秒針が一回転してから、「なんで、あの娘の作品が通過で私のがダメなのよぉ!」と叫んだ。


 これは、翼の特攻記である。


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