第5話 望月眞希の誕生日パーティー

 それから数日後…

俺達は眞希を遊びに誘っていた。


「おはー」

「「「おはよー」」」


 5月某日。

本日は望月眞希の誕生日であり、ある計画を遂行する為に多摩センター駅付近で遊ぶ事になっている。

 本日のメンバーは俺・彰人・天宮さん・眞希の4名である。


「今日は誘ってくれて有難うね」

「気にするな。一緒に遊びたいから誘ったんだから」


 そう言って俺は眞希の服装を見てみる。

5月中旬で少し暑い事もあって上はロゴの入った黒のトップスにデニムパンツで、可愛らしいバックを持っていた。


「おお、今日も可愛いな」

「あんがと。それで今日はどうするの?」

「今日は多摩センター付近で少し遊ぼうかなって思ってる。それじゃ早速近くのカラオケ店に行くぞ!」


 ――現在時刻は10時55分。


 今から徒歩数分圏内のカラオケ店に行けば開店時間と同時に中に入る事が出来る為、少し早めに現地集合して貰った。

 

 俺達は改札前の開けたエリアからエスカレーターで下に降り、十字路を右に移動し、外へ向かう。

 その間に軽い雑談をしながら外に出て右に移動し、暫く突き当たりを真っ直ぐ進むとそのカラオケ店は見えて来る。

 エレベーターで上の階に昇り、カラオケ店の中に入ると彰人が受付を済ませてくれて、空のコップをそれぞれ持ち、ドリンクバーでジュースを継ぎ足してから指定された部屋に向かって行く。


 ――えっと、この部屋だったな。


 迷う事無く部屋に到着し、俺が扉近くで女性陣は中心、彰人が奥に座って順番に機械に歌いたい曲を入れて行き、マイクを取り出す。


「じゃあ、俺から行かせて貰うか!天体◯測!」


 俺はマイクを手に握ると曲が始まり、俺は気持ち良く歌い始めた。


「午前二時〜♪」


 開幕の時点で頭を左右に揺らしながら、俺は歌う。

彰人と女性陣は歌える所はマイク無しで一緒に歌ってくれるようだ。


「二分後に君が来た〜♪」

「ほうき星を探して〜」


 俺の後にもう一つのマイクで彰人が歌い、歌詞に乗って行く。

上手いとも下手とも言えない音程だが、今は歌って楽しむ事に集中する事にした。


「見えないモノを見ようとして〜♪」

「望遠鏡を覗き込んだ〜」


 曲は2番に入り、今度は女性陣にマイクを渡してデュエットを組んで歌い始めた。


「「気が付けばいつだって〜♪」」


 見事にハモって二人して笑いながら、歌い続けた。


「「〜〜〜〜〜〜〜〜〜♪♪」」


「あれ?俺達より上手くね?」

「……相性がいいんだろうな」


 何故か女性陣の方が上手い音程で、聞くだけで癒される。

何処までも相性が良く、仲良しな女性陣で羨ましいなと感じた。




※ ※ ※ ※ ※




「じゃあウチはこれで行くね〜L◯mon」


 眞希は米津◯師のLemo◯にし、音程を調整しながら歌い出す。


「夢ならばどれほど良かったでしょう〜」


 眞希は少し寂しそうな表情をしながら歌っていた。

……果たして何を想い、歌っているのだろうか。


「戻らない幸せがある事を〜」


 それはまるで“彼女の人生”を連想させる歌詞であったのは気の所為であっただろうか。


 だけど――


「あなたが居なきゃ永遠に昏いまま〜」


 ふと、眞希が此方を見て少し微笑んだ気がした。


「〜〜〜今でもあなたはわたしの光〜〜〜♪」


 彼女が俺の方を見て歌っていたのは気の所為だっただろうか。

もし、気の所為で無ければ彼女は何を想い、俺に向けたのだろう。

……正直気になったが、本人に聞く度胸は俺には無かった。




※ ※ ※ ※ ※




「じゃあ次は私だね!えっと…アイドル行きます!」


 そうして天宮さんは可愛らしくアイドルを歌い出した。


「無敵の笑顔で荒らすメディア〜♪」


 天宮さんは楽しそうに体を揺らしつつ、集中していた。

天宮さんの場合は歌ったり物事に集中する時には一点集中するタイプと見えた。


「今日何食べた?好きな本は?遊びに行くなら何処に行くの?」


 リズム良く、音程をしっかりしてて聞いてて気持ちが良かった。


「そう淡々と。だけど燦々と。見えそうで見えない秘密は蜜の味」


 そうしてサビが近付いて来ると天宮さんのトーンも上がって行く感じがした。


「誰かを好きになる事なんて私、分からなくて〜♪」


 天宮さんの横で眞希は可愛いものを見る目で見ていた。

まるで我が子の成長を見届ける親のような目の輝きであった。


「誰もが目を奪われて行く、君は完璧で究極のアイドル〜♪」


「きゃあああああ!!いよりっちがアイドルで可愛いよぉぉ!!」

「眞希、落ち着けぇぇ!!」


 相変わらず天宮さんに弱い眞希であった。




※ ※ ※ ※ ※




「俺は好きな曲で行かせて貰うぞ…えっと海色」


 続いて彰人はアニソンを歌う事にしたようだ。

えっと確か艦隊これ◯しょんのアニメソングだったか。


「朝の光、眩しくて〜Weigh Anchor!」


 この曲は俺も好きなので、デュエットで歌う事にした。


「言葉も無くて〜」

「ただ波の音、聞いてた」


 俺と彰人は交互に歌詞をそれとなく歌い続けた。

ところどころ音程が上手く合わない所も何とかカバーし合う事で乗り切った。


「憧れ 抜錨 未来」

「絶望 喪失 別離」


 ――幾つのも哀しみと海を超え、


「世界の全てが海色に溶けても〜♪」

「世界が全て反転しているのなら〜」


 此処で二人揃ってリズムに乗って歌う。


「「今乗り越え未来へと〜Weigh Anchor!」」


 このようにして野朗二人組は気持ち良く歌い切ったのだった。




※ ※ ※ ※ ※




 一通り全員が歌い終わり、小休憩を挟んで雑談を交わしていた。


「いや〜一周目だったけど歌ったわ〜」

「確かに結構勢いに乗って歌った気がする…さて、そろそろ二人共良いか?」

「「うん/おう」」

「え?何?」


 俺が確認を込め、二人に視線を送ると頷いた。


 彰人が機械に「Happy Birthday to You」を選曲に入れ、曲を流しながら三人で歌いながら――

 ポケットからクラッカーを取り出し、下の部分を引っ張って…


「「「誕生日おめでとう!!」」」


「え?え?マジ…?」


 眞希は状況を掴めていないのか、理解するのに時間が掛かった。しかし理解が追い付くと嬉し涙を流しつつ、笑みを浮かべて、


「え、えっと…ウチの為に…その…有難う…」

「いつも仲良くしてくれる眞希ちゃんの為に二人に協力して貰ったんだ〜ほらほらカラオケ店での誕生日サプライズサービスも事前に用意していたから甘い物とかも来るよ!」


 実は自然にカラオケ店にサプライズする事を確認したら、店舗側から誕生日サービスも付けられるとの事だったので付けて貰った。


「誕生日プレゼントも用意してるゾ⭐︎」

「うん!私からは…はい!ピンクで花柄のコスメ!」

「わあ!?可愛い…!」


 眞希は目を輝かせながらコスメセットを見ていた。

眞希は「家宝にしなきゃ」と呟いていたが、使ってくれた方が選んだ本人も喜ぶと思います。


「えっと俺からは…クッキーとかのお菓子の詰め合わせ」

「どれも美味しそう…有難う!」


 彰人はクッキーなどの詰め合わせを眞希に手渡した。

……はいそこ、涎を垂らしそうになってますよ眞希さん。


「それで俺からは…これだ」

「えっ!?ブレスレット!?とメッセージ付き?」


 俺が選んだのはブレスレットだった。

少し前の放課後で何にするかを選ぶ際に目に入ったのがそれだった。無論、意味などは天宮さんから教わったので、メッセージを添える事で良いイメージを持たせている。


「……えっと、いつも有難う。眞希とは中学時代から関係が続いて来て一緒に過ごせて楽しいです。これからも宜しくお願いします。そして、貴方に幸せが訪れる事を願っているよ…遠坂樹より」

「おい、読むな。恥ずかしいだろうが!?」


 眞希は添えられたメッセージを口にして読んでしまった事で俺が恥ずかしさを覚えてしまった。


「ふふっ…樹らしいと言うか何と言うか…けど有難う。これ、大事に付けさせて貰うね」

「……おう」


 そう言って眞希はブレスレットを腕に付け、笑顔で眺めていた。

……どうやら気に入ってくれたようで選んだ甲斐があったものだ。


「ねえ、皆!こんな私を祝ってくれて…有難うっ!!」


 眞希はそう言って満面の笑みでそう言ったのだった。




※ ※ ※ ※ ※




 それからカラオケ店で暫く満喫した後、多摩センターのゲームセンターで少し遊んで行く事になった。


「ふふふっ…皆からプレゼントを貰ったし、少しはウチからも皆にお礼の形として景品をゲットしてあげる!」


 眞希は100円を投入してクレーンゲームで遊んだ。

タイミング良くレバーで動かしつつ、景品の真上を狙って――


「そこっ!!ってアーム弱過ぎ!?」


 眞希が狙った景品は上手く捕まらず、そのまま取り逃してしまう。


「くっ…けど100円が…てか本日の主役はウチなんだから運も味方してくれても良いじゃない!!」

「眞希…無理しなくてええんやで」

「けど!!」


 俺は眞希に優しげない視線を向けつつ、こう言った。


「俺は眞希と一緒に居るだけで楽しいんだ。無理しなくてもいつもお礼は受け取っているからさ」

「樹…」

「……だけど仇は討つ。眞希を困らせる奴は俺が許さない」


 そう言って俺はクレーンゲームに対して、諭吉さんを幾つか両替してチャレンジしたのだが…


「無理ゲー過ぎる…」


 何回やっても、何回やっても、クレーンゲームが倒せない…。

お陰で財布が軽くなってしもうた…。


 仕方が無いので他に楽しめるゲームをする事にした。

例えば女子バスケ部に所属している眞希が得意としているバスケットボールを使った「TO THE NET」では、流れて来るボールを手に取ると的確な角度からゴールに何回も入れ、高スコアを取っていた。


「ふふ〜ん!見たか現役女子バスケ部の実力を!」

「すげぇな…」


 他には某頭文字イ◯シャルDを対戦形式でした。


「えっと曲がる時はブレーキを…あわわわ!?」

「天宮さん、そこはこうすると良いよ」


 台が2台だけだったので、俺と眞希VS彰人と天宮さんのチームに別れて女性陣が対戦し、男性陣はサポートをしていた。


「いよりっちに勝たせたいけど…それでも勝ちたいウチもいる…どうすれば…ぐぬぬぬぬ…」

「勝った方が負けた方に命令を出せるとかで良いんじゃね?」

「つまり命令が出せる…!いよりっちに勝てればウチと一日中デートをしてくれるってコト!?」


 相変わらずの天宮さんラブだったり、


「おらぁ!?彰人そこは俺の道だ!!」

「負けてられるか!?(天宮さんに良い所を見せる為にも!?)」


 男同士で暑苦しい戦いを繰り広げたりしていた。

俺と彰人はそれぞれゲーム経験者であった事からレースでは、激突し合っていて妨害したり、進退を繰り返していた。

 因みに勝負の結果はいっ君さんがギリギリの所で勝てました。


 そんなこんなで楽しいひと時を過ごしましたとさ。




※ ※ ※ ※ ※




 それから午後15時を過ぎた辺りで解散する事となり、俺と眞希は二人で電車に乗って帰路を辿っていた。


「樹、改めて今日は本当に有難うね。良い誕生日になりそう」

「おう。俺は出来る事をしたまでさ」

「……ウチってさ、こんな性格だから正直に言葉にした事が相手を傷付けてしまい、気付けばひとりぼっちだったからさ。

 こんな風に祝って貰えるなんて果たしていつ振りなのかなって」


 そう言って眞希は少し泣きそうになっていた。


「中学時代は家族以外から祝ってくれるのは殆ど居なかったさ。樹や皆が祝ってくれる事実に嬉しさが溢れて来ちゃって…」

「……そうか。大した言葉は掛けられないが、それでも俺や皆はお前の味方でいると誓い続けるよ」

「うん…約束だからね!」


 そうして俺と眞希は約束を交わす。


「指切りげんまん、嘘ついたらころーす!」

「怖っ!?」


 約束が重いんですがそれは…

しかし眞希は俺の言葉に気にせず、此方に視線を向けると…


「絶対“約束”だからね!」


 そう言って眞希は満面の笑みでニコッと笑うのだった。

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