内裏の事情
東の対屋で一晩過ごした私は、翌日見事に発熱をした。
原因は一気に力が戻ったかららしい。
それは仕方がないというか、そばに雪華が付きっきりで看病をしてくれている。
〈あー、熱なんて何歳のときぶり??〉
〈皐月は、健康優良児だったからのう。乳幼児以来ではないか?まぁ、仕方あるまい。18年分の力が一気に戻ってくれば熱も出ようぞ。〉
〈それは記憶がないわけだ。ねぇ、雪華~とりあえず熱が下がったらお世話になる分働きたいな~。〉
〈その位、青龍も許すじゃろうて。妾たちのお姫様は好奇心旺盛で行動力の塊だと知っておるからのう。〉
〈で、その青龍は??〉
〈色々と確認事項でもしに行っておるのじゃろうな。朝から姿を見ておらぬ。〉
〈早く熱下がらないかないかな~。〉
なんて、雪華に話しながらうとうとして寝たり起きたりを繰り返した。
この時代に来てから3日後、熱も下がり、ふわふわとした力の感覚を確かめながらグッと身体を起こした。
「おはよう。」
〈おはよう、皐月。若奥方から着物を預かっておる。〉
「ありがとう。」
渡されたのは、狩衣。
このチョイスはきっと青にぃだろう。
〈壺装束より、狩衣の方が動き慣れておろう?〉
〈いや、そうだけど・・・。〉
〈ちなみに、初めは袿が準備されようとしていたようだ。〉
〈それは、いやだな。〉
と雪華と話しながら、狩衣に着替える。
色目は初秋を感じさせる桔梗。模様もちゃんと入っている。
狩衣に着替え、髪の毛を組紐でポニーテールに結う。
「青龍。」
〈おはよう、皐月。体調はもう良いか?〉
「うん。バッチリ。狩衣ってことは、顔隠さなくて良いのでしょう?」
〈そうだな。あと、仕事をしたいと玄武から聞いたが、我々が側に控えている状態であれば構わない。〉
「少し、楽だね。晴明様にご挨拶に行こうか。」
〈我々は姿を隠して着いて行くから用があれば、呼べ。まぁ、見える人間には見えるがな。〉
「わかった。ねぇ、この調子だと、琥珀と朱桜も喚べる??」
〈今の皐月なら余裕だろうな。〉
〈あの子らも喚んでやらぬと、後々大変そうじゃから妾は呼ぶべきじゃと思う。〉
「なら、晴明様にご挨拶をしたあと喚ぼう!!」
そう決めると、蔀戸を全部開けて風を室内に通す。
部屋の換気して、まずは厨を目指す。
おそらくそこには、この狩衣を準備してくださったであろう、若奥方様がいらっしゃるだろう。
まずはそこを目指す。
青にぃと雪華の案内で厨に顔を出せば、1人の女性が食事の準備をしていた。
「おはようございます。」
「おはようございます。体調はもう大丈夫かしら?」
「はい。ご心配をおかけいたしました。熱も下がり絶好調です。狩衣も準備して頂きありがとうございます。」
「時親のお下がりで申し訳ないのだけれど、ごめんなさいね。」
「お気遣いありがとうございます。私の名は安倍皐月と申します。これからお世話になります。よろしくお願いいたします。」
とご挨拶をする。
「初めまして、吉平の妻の若菜と申します。こちらこそよろしくお願い致します。」
と、ご挨拶をして朝餉の準備を手伝った。
安倍邸では、家族全員が揃ってから朝餉を食べるらしい。すでに出仕をしている人もいるので、現在邸に残っているのは、晴明様と私と若菜さまそして吉昌さまの奥方の菊さまがいらっしゃるらしい。
安倍邸は階位の割に大きな屋敷を構えているので、それぞれの対の屋にそれぞれの家族が住んでいるらしい。
私が与えられた、東の対の屋はお客様用で、北の対の屋に吉平さま家族が、西の対の屋には吉昌さま家族が住んでいらっしゃるらしい。
そして、寝殿に晴明様の部屋があるということ。
それにしても今聞いた年齢的にみんな結婚をしていてもおかしくない年齢ではある。
平安中期の平均的な結婚の年齢は、17~18歳。なので
そんなの事言われたら、女性である私は行き遅れというやつではないだろうか?
何せ、私18歳になったばっかりだもの。
なんて、晴明さまと若菜様、菊さまと安倍家についてお話をしながら朝餉を食べ、片付けを手伝った。
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