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「この冊子に見覚えはあるか?」


と青にぃが取り出したのは、おそらく我が家の系譜を記した冊子だと思う。


「それは・・・・。」

「ひぃ様。儀式いで使用した小太刀は今持っていますね?」


二人から私を隠すように青にぃが振り返る。

その質問に声を発さずコクンと頷き、懐に入れていた小太刀を取り出し青にぃに渡した。

儀式に使った小太刀は系譜の冊子と共に修繕をされながら、初代様から我が家に受け継がれているのモノだ。

青にぃに渡せば、それをそのまま晴明様に渡す。


「貴殿が作ったモノであろう?最後の項、我が姫君位は先ほども裳着の儀式を行い、我らが認め嫡子となった姫君だ。そして1番初めに貴殿の名がある。確認されよ。」


青にぃの話を聞いて晴明様は中を確認する。

自身の筆跡だと確認をしたのだろう。


「“玉依姫”・・・・。」


玉依姫??なんの話なんだろう?


「成人の儀式を終え、我ら神将が認めた三代目の玉依姫・・・斎宮といった方が分かるだろうか?」


斎宮って皇族の血を引く姫君って事でしょう?確かに私の場合お母様関係あるのかもしれない。

お母様は、内親王だし私も皇族の血を半分引いている。

だけど、それはあくまでも私が生まれた時代であって、初代様がいらっしゃるこの時代ではどうだろう・・・・。

どうするのかわからないが、青にぃが対応するといったので、全部任せよう。

だから私は絶対に喋らない!

そう決めると、青にぃの後ろに隠れるようにして目を閉じて会話を聞いていた。

さらに、別の冊子を取り出した。

その冊子を見た二人の空気が変わった。

何を渡したのか私は解らないけれど、証拠になるモノだろう。


「姫君は、私と主上の末裔という分けじゃな。ならば我が屋敷に滞在されよ。これも何かの縁じゃろうし。」

「よろしく頼む。」

「大丈夫なのか?晴明。」

「問題ありません。こうして証拠となるものも持っておりますし、何より普通の姫君ならばこのような証拠があったところで疑ったでしょうが、姫君も彼も神気が溢れております。主上の末裔でなくとも我が一族に連なるものということは疑いようがありません。」

「あい、わかった。このお客人に関しては晴明に任せる。」

「ありがとうございます。今日はこのまま私と一緒に我が家に連れて帰ります。例の件も私の方で考えさせていただきます。」

「ふむ。では、晴明お客人気をつけて帰られよ。」


帝の言葉に一礼をして清涼殿を辞した。

それから帝が手配してくれた牛車に乗り左京にある晴明様の屋敷へと向かった。

晴明様の屋敷の位置は、我が家の家の位置と全く変わっていないと言うことを青にぃが教えてくれた。

建物はさすがに何回か立て直しをしたらしいけれど血落ちは変わっていないというか言う事だ。


〈この系譜全部見えていたの?〉

〈晴明たちには知っている人間までしか名前は見れない。あとは白紙に見える。〉

〈ヘェ〜そうなんだ。〉


なんて強制的に自分を納得させるようにしている。

青にぃは晴明様と歩いてくれている。

一応未来の皇族の血をひいいている私は、身分の高い姫君として扱われるので黙ってなるがまま行動をして、今に至る。

晴明様の屋敷に着けば、青にぃにお姫様抱っ子で屋敷内に運んでくれた。

もちろんこの時代、女性は顔を見せてはいけないので基本的に檜扇で顔を隠しながら連れて行かれる。

帝の命で護衛をしてくれた武官と雑色にお礼を告げ屋敷の中へと入った。


玄関らしき場所で出迎えてくれたのは、24、5歳位で狩衣姿の青年だった。

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