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「お祖父様!!いきなり式を飛ばして来たかと思えば客人を招くとか!母上が慌ててますよ!」

「時親、開口一番それか。ちゃんと事前に知らせたのじゃからよかろう。それより姫君が驚いておるじゃろうが。先にワシの部屋に行っておれ。」


二人の会話から、この青年の名前が時親様。ということは2代目の次男さんだったような気がする。

お兄様にそっくりだわ。

じっと時親を檜扇越しに見つめいていた私は、ぱちっと目があった。

軽く会釈をすると、同じように頭を下げられた。


「お茶の用意をいて向かいます。」


そう言って、奥へと戻って行った。

通されたのは晴明様の私室で様々な書物や道具が沢山溢れていた。

円座に勧められたが、青にぃは相変わらず私を抱き上げたまま座ろうとしない。

仕方がないので、降ろして。と伝えれば私を床に降ろしてくれたが、私にピッタリとくっついて離れない。

円座に座り檜扇で顔を隠したまま、晴明様と向き合おう。

しばらくしてお盆に茶器を載せた、時親様がやってきた。


「失礼します。」


茶器がそれぞれの前に並べられると、時親様は部屋から出て行こうとしてたのだが、晴明様によって止められた。


「時親、ちょっとお前にも関わることだから残りなさい。」

「はぁ・・・?私がどう関わるのです?」

「今から説明をする。」


時親様は、晴明様の隣に腰を下ろした。


「青龍殿・・・・。今回の原因には分かっているのですかな?」

「系譜に血判を押したのが引き金だ。本人が自覚していないだけで、ひぃ様が生まれてからずっと我ら神将が見守り育ててきた。本人は霊力が少なく出来損ないと思っているが、器から溢れでた霊力神気を我らが毎日吸っていたのだから、少なくて当たり前だ。吸わないと、器である肉体が持たないからな。」

「それは、どういう事かな?」

「安倍の一族には、ごく稀に神に近い力を持って産まれてくる娘がいる。過去に2人ひぃ様の様に膨大な力を持ってう生まれてきた娘がいた。我らはその姫が生まれた時よりそのモノに仕える。基本的に力の多さが当主となる条件の一つだから。だから、我が姫は成人の儀に本来の力を取り戻す。そして、姫君の本来の力に1番近い安倍一族の過去の当主の元へ飛ばされる。元の時代に戻る者もいるが、戻らない者もいた。このような事が起きるのは、当主となる姫君が産まれた時のみ。」

「青龍殿の主人は、姫君で間違いないか?」

「間違いない。姫の一族の初代当主である、晴明殿の所へ飛ばされたということは、“始まりと終わりを意味する”その選択をするのは、我が姫君のみ。」


晴明様と青にぃが話しているのを聞いていていい、私自身初耳の事も多いけどポーカーフェイスを貫く。

そのお話に割って入ってきたのは、同じく話を聞いている時親様。


「ちょっと、待ってください!お祖父様。話が分からなすぎる。」

「時親、ちょっと黙っておれ。姫君の本来の力は私と変わらぬということか?」

「翁曰く、晴明以上かも知れない。と言っていた。」

「翁というのは・・・?」

「十二神将の中で長的立場にいる、天空だ。我々は貴殿の式となった後、ずっと安倍一族の直系を見守ってきた。我々の姿をしっかり捉えるモノは少なかったし、関わらなくても構わないと思った当主には相性の良い神将がそばに控えていた。」


つまり、青にぃ達がしっかり視えている一族の人間は少なかったということか。

ん?それじゃあ物心つく前からしっかり姿を見えていた史、声も聞こえていた私は青にぃがいう通り本当は力が強いということなんだろう。

私が関わったことがある神将は、青龍を含め4人。


〈青にぃ私の力って、コップに注がれた飲みモノが溢れた分しか使用できていなかったって事?〉

〈簡単に言えば、そうだな。器に入っている分の力は我らが吸っていたという事もあるが、吸った分はそのブレスレットに溜め込んでいた。〉


そういうことか。

と私自身は納得をする。

つまり、霊力が少ないのにやったら知識や技術を叩き込まれたのは本来の力が戻った時に力を持て余さないためだろう。


「つまり、そちらの姫君が私たちの末裔ということですか?」

「末裔・・・子孫だな。しかも直系の。そして、今上帝の子孫でもある。」

「は?!」


青龍が発した言葉により、時親様は固まった。

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