第18話 怖い怖い…。外の世界は怖い。これから何するか?そりゃ…引きこもります。

「平突?外に出てきてよ~。」

「絶対行かないぞ、俺は外に出ない!!」

 アトランティスから帰ってきて、平突が部屋に引きこもってしまった。理由は何となく分かるんだ。死にかけて、この世界でも死ぬことを理解したからだと思う。僕はどうすればいいかな?何をすれば、平突を外に連れて行ってあげられるかな?

「今日もダメだったんですか~?お母さんは大変ですね~。」

「そうなのよ~!分かる?うちの平突はいい子だったのに…。」

「うるせぇ!!部屋の前でやるな!!木瓜のばばぁ!!」

「こんなにもツッコみは冴えているのに…どうしてなの?」

「いっそのことですけど~実力行使してみますか~?」

「それは良くないかしら…。」

 お母さん役としてボケていれば、外に出てくるかな?とも思ったけど、失敗だったみたい。作戦を本格的に考えてあげないとなぁ…。う~ん…何も思いつかないんだけどなぁ。

「そんなにあの魚人が怖かったのかな?」

「チョウチンアンコウですからね~。勇気を食べられてしまったんですよ~。」

「肝を食べられたんだね…。肝が美味しいって言うもんね!」

「……。」

「ここに居てもしょうがないか。よし、行こう」

「そうですね~!」

 リビングで本格的に作戦会議をしないと駄目かもしれないね。よし、作戦会議だ。

「どうすればいいと思う?」

「そうですね~…。部屋から出す事自体は簡単なんですけど~!」

「そうなの?!例えば?」

「ワープゲートに乗せるとか~鍵をこじ開けるとか~」

「そうなんだ~すごいね!でも、出て来た後、部屋に帰るかな?」

「そんな気がしますよね~?」

「引きこもりは手ごわいって聞いたことがあるよ?」

 引きこもりにも原因があるとは思うんだ。その理由を何とか取り除いてあげる事で外に出てきてもらう。それが一番いいんだけど…。それを取り除いてあげるのは僕らじゃなくて、平突自身だと思う。

「罔象女神 (みつはのめのかみ)様はどこに行ったの?」

「居ますよ~?平突さんの傍に~!」

「えぇ?!原因と衝突事故起こすんじゃない?!」

「多分大丈夫だと思います~!衝突してもひき逃げはしません~!神ですからね~!」

「うわぁ…天使って結構凄い事するんだね?」

「時には必要なんです~。試練なんですよ~?」

「肝試しだったって事?あれ…平突の肝飛び出てきてるよ?」

「あまりグロいのは得意ではないのですが~…。」

「平突の肝を押し込んであげる?」

 まぁ…そんな事をしても、強くならないかな。平突はあんな感じに見えて繊細なんだ。ツッコみにも凄い気を使っている感じがするしね。

「こんなシリアス展開、誰も望んでないんだけどなぁ…。」

「ここらでテコ入れが必要だったんでしょうね~?」

「この物語は人が死なない様に出来てるからね!」

「……。」

「で、作戦どうしようね。」

「話が全く進みません~。」

「全く…二人だけではダメなのですね?」

「あれ?!罔象女神 (みつはのめのかみ)様?!」

「わぁ、先ほどぶりです~!」

「私は解放していただいて、そのままで良かったのですが…。会議を進めるのも私が居ないといけないようです」

「どう?何かいい案を思いついたからここに居るの?」

「そうですね。作戦的には天岩戸隠れ作戦ですかね?」

「岩戸…すごい重たい戸だ!人間の力じゃ開けられないね…。」

「それはそうでしょうね~。神様の力を借りるんですよ~?」

「そうです、私達で外に出て楽しい事をしていれば、興味が湧いて降りてくる。そんな感じでしょうか?」

「なんていう斬新な作戦?!引きこもりにはつらい作戦かもしれないね?!」

「あの方はこの世界においては太陽みたいな存在ですので。それにほら、外を見てください?」

「あれ?!あんなに日付が変わらないとか言ってたのに暗いよ?」

「これがあの方のお力なのです。」

「天照大神(あまてらすおおみかみ)様?!僕は平突に跪いて…。」

「あぁ、神ではないので。勇者なのです。」

「勇者神様!」

「ふふ…それは良いですね。」

 勇者神は心を痛め、部屋の扉を閉めました。硬く閉ざされた扉を開けるために、僕らは必死に面白い事をして興味を引きます。部屋から出て来た所を…はい、確保!

「すごい!作戦が頭の中に浮かんでくる!」

「決まりましたね?肝心なのは…誰がどんな役割をするかですよ?」

「そっか…ボケしか居ないから興味を引くようなボケを続けるのはどうかな?」

「貴方…さては賢いのですか?名前からはそうは思えないのですが?」

「僕は自分を賢いと思ったことは無いけれど…僕だって平突の隣に居るからね!」

 僕は…きっと平突と一緒に面白い事をしたいだけ。だからこの世界に連れてこられたんだろうね。頑張って、平突と一緒に歩けるようにこの作戦を成功させないとだ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る