第2話・なして、言葉通じとるん?
地面を潜って、安全な場所に出てきた魔呪生物『移動くん』は、呑み込んでいた魔姫とミセリア・ステラを吐き出した。
うげぇぇぇッ……粘液まみれで、吐き出されたミセリアは放心状態だった。
魔姫がミセリアに口移しで、気つけ薬を飲ませる。
我に返ったミセリアが、断続的な言葉を発した。
「あ、あたし……怪物に呑み込まれ……た、あッ……口の動きとセリフが合っていない! あたし、怪物に……」
ミセリアに魔姫が言った。
「『移動くん』に呑み込まれる前に聞いてきたよね『どうして、言葉が通じるのかと』……お答えしよう、実際にはあたしたちは会話をしていないの、母国の言葉を喋っているだけ……ミセリアとあたしが発した言葉は瞬時に翻訳されて、有名な声優が吹き替えをしてくれているから、レザリムスでの会話が成り立っているの」
口を閉じた
吹き替えの会話が再開する。
ミセリアが言った。
「これから、どうするの? あたし、どうしたらいいの?」
「とりあえず、あたしを城に連れもどそうとしている追ってから、逃げながら旅のはじまり……どこかに、あるという銀色のリンゴを探す」
「銀のリンゴ? いったい、あなたナニをしたの?」
毒星 魔姫は、唇に人差し指を当てると片目をつぶって見せた。
「それは、追々説明するから……とりあえずは、今夜泊まれる宿を探して……『ミセリア・ステラ』は、あたしを守る女騎士なんだから」
◇◇◇◇◇◇
森の中の道を歩きながら、魔姫が状況をミセリアに説明する。
「城の中で、こっそり禁断の魔呪の実験をしていたら、死者が甦っちゃってね……いやぁ、師匠に怒られたコト、その時に壊した魔具のせいで城が大爆発して半壊しちゃって……城から、あたしに忠義な女騎士のミセリア・ステラを連れて逃げ出したワケ」
「はぁ……そうですか」
魂がライダーの女性は、半ば呆れた顔で魔姫の話しをミセリアの体で聞いて質問した。
「で……どうして、この体の主の女騎士は死んだの?」
「いやぁ、ミセリアはバカ正直というか……命令に忠実というか、忠義心が強いというか……あたしの言葉を疑わないというか、父上からあたしの護衛をするように言われた指示を、ずっと守り続けていて」
「それで、敵とか魔物と闘って命を落として召喚した、あたしの魂を入れて甦らせたと……ミセリアはどんな死に方を」
「あたしが断崖の所にあったキノコが食べたいって冗談で言ったら……本当に採りに行って」
「それで、滑落して命を……」
「いや、ミセリアはキノコを採って降りてきた」
「はぁぁ?」
魔姫がひょひょうとした口調で言った。
「毒見をしてと冗談で言ったら……本当に食べて……死んだ、だから甦らせ」
女性ライダーの魂が入ったミセリアが、鞘から剣を抜いて魔姫に向って怒鳴る。
「全部、おまえが悪いんじゃないか! あたしを元の世界にもどせ!」
「元の世界の死体にもどっても、腐敗していく体の中で野生動物に食い荒らされる恐怖を感じながら、消滅するだけだよ……ファイナルアンサー、このままミセリアとして異世界で生きるか、朽ち果てていく死体の魂で苦しみ続けるか……どっち?」
「チッ」舌打ちした女性ライダーのミセリアは、抜いた剣を鞘に収めた。
「銀のリンゴってなんだ……それを知らされないで護衛旅なんてできるか」
「今は……ヒ・ミ・ツ、さっさと今夜の宿を見つける……ミセリアは目だけはいいんだから」
「腹立つなぁ……魔呪姫」
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