第26話 これから、どう呼び合えばええんやろな
朝。
リビングに出ると、カナメとミオがすでに待っていた。
二人とも、昨日までと同じ護衛の顔をしているようで――でもどこか違う。
「おはようございます、任谷さん」
カナメはいつも通り優雅に微笑む。
「おはよー任谷さん!」
ミオはソファに寝転がりながら、こちらに手を振った。
「……なあ」
ハルキは二人を見渡し、少し照れながら口を開いた。
「オレら、もう“恋人”になったんやろ? せやったら……呼び方も変えたほうがええんちゃうか」
「呼び方、ですか?」
カナメが小首をかしげる。
「そうや。いつまでも“任谷さん”やと、距離がある気がしてな」
「ふむ……。ですが、私は長年“任谷さん”とお呼びしてきましたから、急に変えるのは……」
カナメは少し頬を染め、視線を逸らした。
「じゃあ私から!」
ミオが勢いよく手を挙げる。
「“ハルくん”とかどう? かわいいし、恋人っぽいじゃん」
「か、かわいいって……」
ハルキは思わず赤面する。
「ふふ、悪くありませんわね」
カナメが口元に手を当てて笑う。
「でも、私は“ハルキ様”とお呼びしたいですわ。恋人であっても、敬意は失いたくありませんもの」
「様付けは逆に距離あるやろ!」
「じゃあこうしよ」
ミオがにやりと笑う。
「普段は“ハルくん”。でも真面目な場面や人前では“任谷さん”とか“ハルキ様”。使い分ければいいんだよ」
「……なるほどな」
ハルキは腕を組んで考える。
「オレも、二人のことどう呼んだらええんやろな。カナメは“カナメ”でええか?」
「はい。むしろ下の名前で呼んでいただけるのは光栄ですわ」
カナメは少し照れながらも、嬉しそうに微笑んだ。
「ミオは……まあ、ミオやな」
「えー、それだけ? “ミオちゃん”とか“ミオっち”とかでもいいのに」
「……お前はそのままで十分や」
「ふふ、そっか。じゃあ“ハルくん”って呼ぶね」
ミオは満足げに笑った。
三人で顔を見合わせる。
呼び方ひとつで、空気が少し柔らかくなる。
「……なんや、名前を決めるだけで、ほんまに“恋人”になったんやなって実感するわ」
「ええ。私も、そう感じますわ」
カナメは胸に手を当て、静かにうなずいた。
「じゃあ決まり! これからは“ハルくん”と“カナメ”、そして“ミオ”。三人の恋人生活、スタートだね!」
「おい、勝手にまとめるな」
ハルキは苦笑しながらも、心の奥が温かくなるのを感じていた。
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