俺が学園のアイドルたちとのハーレム生活を送るって、ホントですか?
アサガキタ
第1話 進路希望か婚姻届けか、それが問題だ。
「
「へーい」
俺は担任の
「なに、
クラスの女子。
誤解がないように先に言う。クラスの女子と話したからってリア充ではない。佐々木美玖との関係は、いわゆる自虐仲間。閉塞感溢れる我が人生を面白おかしく語る仲だ。ほっそりとした顔。ふわりとした栗色のボブカットっていうのだろうか。そんな感じ。小顔で姿勢がやたらいい。
「お前と違って、目標なく生きてるもんでな。俺と話してると自堕落が
俺はまことしあかな顔してフェイクニュースを流す。
「あぁ……そうなんだ、早めに教えて欲しかったかな、もう
自虐からの溜息コンボ。佐々木、なかなか腕をあげたようだ。もう、儂からお前に教えることはない。
「音大。行くんだろ?」
俺は佐々木の肩に掛けられたフルートケースを指先でトントンとした。
「音大⁉ まっさか! 冗談はよしこさん! だって、ダンナ。入学してこのかた、ただの一度もコンクールメンバーになったことないんだぜ? 知ってんでしょ、ダンナ? へっぽこなんだぜ、あ・た・し! ダ・ン・ナ?」
「誰がダンナだ? ん? あれ? 俺、お前のダンナになったっけ?」
「ずきゅん~♡ ある意味私の目指す道、ゲッチュー! バカ言ってないでさっさと帰って進路希望か、婚姻届け書けっーちゅーの。あぁ~~メンバーになれたら私の初めて君に捧げてもいいよ、んじゃあ、またね。バーイサンキュー!」
棒読みの疲れ切った顔で佐々木は部活に消えた。っか、佐々木って処女なんだ。まぁ、かく言う俺も童貞なんですが。もし佐々木ったら、メンバーに選ばれたら本当に俺に初めてを捧げてくれるのだろうか?
言い換えれば、俺も佐々木に初めてを捧げる等価交換なんだけど、ちょい違うか、価値が。とりあえず、顧問の先生に折り菓子持って行くか。いや、止そう。めちゃ嫌な
問題は、今日帰って進路希望を書くのか、婚姻届けを書くのかだ。
折り菓子はともかく話を戻す。見上げ坂高校吹奏楽部。全国を目指すどころか、全国の頂点を狙う超名門吹奏楽部。佐々木と競うフルートだけで10人以上いるらしい。確か佐々木の中学の吹奏楽部は全国に行っていて、佐々木自身も全国大会に行ったと聞いた。
そんな佐々木でも、ウチでは一度もメンバーになれてない。きっと県下じゅうから志高い系がやってくるのだろう。部活も生半可な厳しさじゃない。放課後はもちろん、朝は校門が開くと同時に吹奏楽の部員が列になって流れ込むとか。休みなんてある訳がない。確か去年、家庭の事情でこっそりバイトした先輩が退部させられたとか。超絶厳しい……
教室でヤバ目の愚痴を吐かずにはいられない気持ちも、わからないでもない。暇人の俺は帰るとするか。
「やーさん」
「おう、船田。帰ろうぜ~大野は?」
「大野はバイト。忘れてたらしい、ダッシュで帰った」
「んじゃあ、帰るかー」
いつもつるんでるヤロー三人組。そのひとりがバイトで脱落。いつまでも教室にいても仕方ないし、さっさと帰って部屋にこもろう。この時間なら、運がよければ妹にも母親にも顔を合わせずに済む。それだけでも勝ちだ。
かばんを手に颯爽と教室を出ようとするが、なぜか船田は教室の入り口付近で立ったままだ。よく見るとほんの少しの困り顔。
「どうした、腹でも痛いのか?」
「いや、えっと…やーさんにお客。何か用があるんだってよ」
「お客?」
おかしい。俺の記憶が正しければ、彼氏持ちの女子を寝取った記憶もないし、進路希望は明日だし、佐々木は部活だし。俺に用のありそうな奇特な方はこの世界にはいないはずなんだが。
「もしやお客って……女子なのか⁉」
ワザとらしく震え声でおどけて見せるが、当の船田はノリがいまいち。本当に腹が痛いのかも知れんな。そんなどーでもいい推理をしていた俺の視界に飛び込んできた。
「はじめましてだね、やーさん!」
トンと飛び出て勢いよくのお辞儀。ふわりと舞うロングヘア。そして人間関係の距離の詰め方半端ない系女子。満面の笑顔。はは~ん、わかった。何か宗教的な勧誘だろ? 言っとくが、俺はこずかい2千円(昼めし込み)だぞ? バイトしなきゃ、昼めしも抜き! なので残念だがお布施は出来ん! 自分の財布の惨状に溜息が出そうだが、我慢することにした。
「罰ゲームか?」
「罰? 戦争と平和――トルストイ」
「いや、それいうなら罪と罰――ドストエフスキーだろ? 高度にボケられても…」
文学的なボケとツッコミをしてみたものの、そのどちらも読んだことはない。世界史のテストのために覚えただけの、薄っぺらい、うすうすの知識。
しかし、このボケをしてくることをみると、この女子は選択科目世界史だな。ちなみにこの年代の男子は『うすうす』という言葉になぜか心躍る。
「つまりジャンケンで負けて山県
まくし立てた。そもそもこんな独特ではあるが、美少女に分類される感じの女子が俺を出待ちするはずない。用件はさらーッと済まして家で動画でも見よう。
「いやぁ~君、案外テンション高いね! 知ってる? 私ったら演劇部なの。元だけど、付け加えるなら私のお
不意にぶち込まれた懐かしい名前に、俺の止まっていた時計の針が動き出した。そんな春の終わりだった。
▢作者より▢
読んでいただきありがとうございます。
気に入って頂ければ――♡で応援・ブックマーク・☆評価よろしくお願いします。
最後まで読んで頂き心より感謝いたします。
アサガキタ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます