あるブラック企業の話・後編(M/F、鞭、ブラック企業、連帯責任、理不尽、ハード)

通勤途中の駅構内で、その企業の一人の女性社員がふらりと崩れるように倒れ込んだ。

ストレスと過労、そして連日の苛烈な懲罰が原因だった。


救急搬送された病院で、意識のない彼女の身体を診た医師と看護師は言葉を失った。

通常のスパンキングであれば、ケアをすれば一晩で跡は消える。厳しいお仕置きでも数日で癒えるのが常識だ。

だが彼女のお尻はケアをしている形跡はあるものの異常な赤みと腫れ、幾重もの鞭痕に覆われていた。

度を越した懲罰を繰り返し受け続けているとしか思えなかった。

医師は迷わず警察へ通報した。

 ***


その日の午後。

会社のロビー近くにある広い部屋に、全女性社員が集められていた。理由は「無断欠勤が出たから」。

実際には緊急搬送されていたのだが、社内では「サボり」として扱われ、同じ部署の女性社員たちが見せしめに全社員の前で鞭打ちされようとしていた。


「誰かが欠勤すれば、真面目に出勤している仲間がこうなる。全員、目を逸らすな!」


社長の怒鳴り声が響き渡り、空気が一気に凍りつく。

前に引き出された女性社員たちは、下半身は前掛け一枚のまま、長机の前に並ばされた。震えながらも命じられるままに両手を机に付き、お尻を突き出す。既に泣き出している者もいた。


叩くのは社長を含む上層部の男たち。

誰もが鞭を手にし、口元には冷たい笑みを浮かべている。


 ビシィッ!


最初の一撃。鋭い音と共に、女性の尻が大きく跳ね、短い悲鳴が漏れる。


「うっ……!」


すぐに次の鞭が別の上司によって振り下ろされる。

連続する音が響き渡り、列になった尻から小さな悲鳴が次々と漏れた。


「あぁっ……!」「いたい……!」


赤い線が一本、二本と増え、やがて全体が腫れ上がっていく。

後ろで見ている他部署の女性社員たちは顔を強張らせ、泣き出す者もいた。自分たちも同じ経験を繰り返してきたからこそ、その痛みと屈辱を想像できてしまうのだ。


「ごめんなさい! ごめんなさい!」


叩かれている女性の一人が、叫びながら崩れ落ちた。

それを皮切りに「すみません!」「許してください!」と謝罪の声が次々と重なる。

だが鞭は止まらない。崩れ落ちた社員は机に腹ばいに乗せられ、容赦なく打ち据えられる。


鞭の痛みで泣き叫ぶ声、嗚咽、すすり泣き。無機質な鞭の音が絶え間なく響き、部屋全体を支配していた。


 ***


やがて何周もして、悪夢のような鞭打ちが終わった。

叩かれた女性社員たちは咽び泣き涙でぐしゃぐしゃの顔を伏せ、真っ赤に腫れあがったお尻を突き出したまま机に並び晒されていた。


「無断欠勤した本人が次に出社したら、一日中鞭打ちだ。楽しみにしておけ!」


上司の声に、社長がニヤつきながらそれを見守る。

そのとき――。


「警察だ!」


鋭い声が響き、扉が開かれた。

警察官たちが一斉に突入する。


「マズい!」と叫ぶ上司が叫んだが、もう遅い。

社長と上司たちは慌てて逃げようとしたものの、その場で取り押さえられ、次々に手錠をかけられた。

女性社員たちは急いで保護され、救急搬送されていった。


 ***


――検査入院の日々。

異常なほどの腫れと痕で覆われていたお尻も、医師と看護師による治療で少しずつ回復していった。

「通常のスパンキングなら一晩で癒えるはず」という常識を逸脱した傷も、やがて綺麗に治っていく。


この事件は全国ニュースで大きく取り上げられた。

「最低最悪のブラック企業」として即日倒産、社長と上司たちも逮捕され、重い刑罰は免れないだろう。


もちろん心の痛みはすぐには消えない。けれど「もう二度とあの会社に戻らなくていい」と思えるだけで胸が軽くなる。

入院先で顔を見合わせた同僚たちの瞳には、涙の奥に小さな安堵と未来への希望が宿っており、駅で倒れた女性に対しては「倒れてくれてありがとう」なんて言うほどだった。

まさかの所業に元請けの大企業からも謝罪と再就職の斡旋が約束されている。


――前を向いて歩いていける。

そう確かに思える未来が、ようやく彼女たちの前に差し戻されていた。

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