お仕置きカフェ単発バイトの話(X/F、機械のアーム、単発バイト)
「うそ……当たったぁぁぁぁ!!」
夜、自室でスマホを握りしめ、彼女は飛び跳ねる勢いで叫んだ。
念願の推しのライブチケット当選、落選続きだったから、当選画面を見た瞬間、涙まで出そうになった。
――が、すぐに青ざめる。
「やば……お金ないじゃん」
学費や生活費をやりくりして推し活に注いできたが、ライブ遠征費となると桁が違う。バイト代だけじゃ到底足りない。
ふと彼女の指が、スマホのアプリを開いた。
それは『スパンキングされる代わりに報酬を得る』「スパンキング系単発バイト」をまとめた求人アプリ。
スパンキングを観ながらお茶や食事を楽しむお仕置きカフェやスパンキングレストランが主に求人を出しており、これらの店は基本的にプライバシー重視でお尻以外の部位を隠してくれるので女性向けの単発バイトとして人気の求人アプリだ。
(久々に行くか……)
そう呟いて画面をスクロールすると、以前に何度か入ったことのあるカフェの『五分間スパンキング+十分間晒し』の求人が目に入る。彼女は即座に応募ボタンを押した。
***
お仕置きカフェは、一見すると普通の落ち着いたカフェだ。
木目調の内装にジャズが流れ、香ばしい珈琲の香りが漂う。
だが普通のカフェと違うのは、19歳未満は入店禁止で壁際に備えられた「スパンキング台」。
このお仕置きカフェはひとつだけスパンキング台があり、そこから覗く丸いお尻が一定のリズムで自動アームに叩かれて、その音がBGM代わりになっているのだ。
客はそれを眺めながら聞きながら珈琲を楽しむ――それが『お仕置きカフェ』の基本的なスタイルだった。
***
バイト当日。
裏口から女性が「おはようございまーす」と声をかけると、店長が振り返って笑った。
「お、久しぶりだな」
「推しのライブが当たったんです! でも……お金が全然足りなくて」
「なるほどねぇ。ほんと、みんな推し活のために頑張るな」
軽く感心しながら店長は頷く。
「じゃあ今、前の子が叩かれてるから、少し待っててな」
待機室に腰掛けると、カーテンの向こうから「いたいっ! ごめんなさい!」という声が微かに聞こえてきた。アームが叩きつけるバチンバチンという音、泣き声。それらは客席には届かないよう仕組まれているが、待機している女性には生々しく響いてくる。
(あー……やっぱドキドキする……けど、推しのため!)
鼓動を早めながら拳を握る。
やがて前の女性のバイトが終わり台の掃除を終えた店長が「お待たせ、じゃあよろしく」と声をかけてきた。
***
ブースのカーテンを閉めると、彼女はスカートと下着を脱ぎ、荷物と共にロッカーへ。
台にうつ伏せになると、安全のため腰と足が軽く拘束された。
『台が動きます。そのままでお待ちください』
機械音声が流れ、台がゆっくりと後退。次の瞬間、彼女のお尻が店内へと晒された。
注目が集まる。客全員の視線が突き刺さる感覚を感じ、彼女は思わず顔を赤くした。
『それでは、5分間のスパンキングを開始します』
バチン! バチン!
「んっ……くぅ……!」
最初は声をこらえていたが、アームは容赦なく一定のリズムで叩き続ける。真っ赤に染まっていく自分のお尻が、客席に晒されている――その羞恥心が痛みと同じくらい強烈だった。
「いたっ……! あぁっ!ごめんなさーいっ!」
悪いことなんてしていない。むしろお金を稼ぐためにここに来ているのに、条件反射のように謝罪の言葉が口からこぼれ落ちる。
バチン! バチン! バチン!
五分間は恐ろしく長く感じられた。
やがて五分間アームが停止し、アナウンスが告げる。
『それでは、十分間の晒し時間です』
「ひっく……うぅ……」
じんじんとした痛みに涙をこぼしながら、彼女は必死に手で拭った。
お尻は客席に向けられたまま、客は静かに珈琲を飲みつつ、その真っ赤に腫れた姿を見守っていた。
***
やっと終了の合図が鳴り、台が戻ってきた。
拘束を解かれ、彼女は身支度を整えてブースからでると店長が声をかける。
「お疲れさま、湿布いるか?」
「んー、大丈夫です! ありがとうございました!」
「いやいや、こっちこそ。またよろしく」
「あはは……しばらくお尻役はいいですけど」
「それなら珈琲飲みにおいでよ」
「推しのために節約中なんで! ライブ終わったら行きます!」
笑い合いながらバイト代を受け取り、彼女はカフェを後にした。
***
帰宅後、ケアを済ませて電卓を叩く。
「んー……服とメイクも新調したら、まだ足りないな……」
ため息をつきながらも、スマホを開いて求人アプリを再びチェックする。
なお、スパンキング系バイトは安全のため月3回まで。
だからこそ彼女は慎重に、次にどの店で叩かれるかを探すのだった。
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