第12話 「『正義』とは」

第12話 「『正義』とは」


慧悟の正義の義鋼刀が問馬へ振り下ろされる。


「Alashi Slash!」


慧悟の風が遠距離から問馬を襲う


「いてぇぜぇ!」


風だけでなくあたりの瓦礫が問馬を切り裂く


だが問馬の長所は怪力、瓦礫を跳ね返す。


それが慧悟の頬をかする。


更に問馬は近くにあった標識をひね、おった。


それをやり投げのように投げてくる。


慧悟は刀で弾くも問馬は強引に距離を詰める


(防御!)


「フルスイングだぁぁっ!」


刀と金属バッドが交差する。


だが慧悟の刀が押され、ガードごと吹き飛ばされた


「ムゥゥッ!」


慧悟の肋骨が砕ける


(なんてパワー。一撃一撃が命に届くレベル。敵に回ればここまで厄介とは…!)


だが問馬は振りが大きく、隙がある。


「いてぇぜぇ!」


慧悟の暴風を乗せた苦無が至近距離で問馬の腹を刺した!


「!?」


(抜けない…!)


だが問馬は腹筋を固め、苦無を固定し、パンチが飛ぶ!


「お前も食らっとけ!」


「グッ!」


慧悟の頭部の装甲が砕け、頭蓋から出血する。


「離れろ!」


「やべぇぜ!」


慧悟の横一文字の一閃、問馬は後退するも浅く腹を薙がれる。


(こいつを至近距離に入れてはだめだ!)


「Storm・Scraper!」


暴風が問馬を削ぐように食らいつく!


「クソがぁっ!」


(なんだこりゃ!すごい風だぜ!)


問馬の体から血飛沫が舞う!


「なら無理やり近づくだけだぜ!オラァッ!」


だが問馬は強引に距離を詰める。


「こいつ…!」


(これをもってしても強引に…!)


問馬はバットを振り下ろす。


「ホームラン!」


が、それが当たった地面が砕ける。


(コイツは振りが大きい。だからそれを狙うしか勝機はないな!)


「疾風居合斬!」


問馬「チィィ!」


疾風居合斬が問馬の腕へ食い込む!


しかし問馬の筋肉がその刃をとめる。


(なんて筋肉だ!切断できん!)


「隙ありだ!オラァ!」


問馬はバッドを薙ぐ。


「ごはぁ!」


またしても慧悟の骨が砕け、折れた肋骨は内臓へ突き刺さる!


「ゴフッ…!」


(コイツ…強すぎる!)


だが問馬も腕が動かない。


(結構深く腕がやられた。片腕が上がらねぇ。切断されなかっただけ奇跡だぁ〜ぜぇ〜。)


その頃剣も譲介とたたかっていた。


譲介が槍のリーチで先制し、剣の脇腹が譲介の槍に切り裂かれる。


剣も毒で反撃するが、もう読まれている。ほとんど躱していた。


(馬鹿な頭でも使わなあかん。こいつは強敵や、なんとかせなあかんな。)


剣の刀がSRの庭の土へささる!


そのまま土を譲介へぶつけ、視界を塞ぐ!


(しまった!視界が!)


「この距離までくれば槍は邪魔なはずや」


そして至近距離まで詰める。


(速い!)


剣は刀をすて、譲介の槍をもつ手を掴む!


恐竜の鋭い爪が譲介の手に食い込む。


「離せ!」


譲介は手を引き抜く!


譲介の拳が剣の顔面を襲う。


剣は寸手のところで手を入れた


(槍で先制する)


譲介がバックステップをとろうとする!


「かせるか!」


剣も同時に前へ踏み込む!


そのとき譲介の片腕に異変が起きる


「!?」


(しまった!毒で左腕が!)


剣がさっき肩に刺した毒が回ったのだ。


意志とは無関係に譲介の手から槍が落ちる


「今やぁぁぁ!もらったぁぁっ!」


剣が叫びながら蹴りを飛ばす。


「ぐぅぅっ!」


その蹴りが譲介の腹を撃ち抜いた!


だが譲介は構わず剣の足を掴む


「捕まえたぁ!」


「なんやて!」


そのまま剣を背負投げした。


「がはっ!」


剣の体が地面へ激しく打ちつけられる!


譲介が馬乗りになって殴りにくる!


(体勢が悪い!まずい殴られ続ければ気絶まったなしや!どないする…考えろ!)


殴られ続ける剣。だが問馬が来る!


「剣ぃぃぃ!」


(まずいぜ!あのままだと剣が!)


後ろから慧悟が追いかける!


「敵に背を向けるとは!かぁぁっ!」


風を纏った苦無が問馬の背中に突き刺さる!


「がぁあっ!」


(背骨はまだ生きてるぜ!)


だが問馬は強引に突っ込む!


「何!?待て!」


あまりの予想外に慧悟は焦る。


(問馬!まずい!)


譲介の額にも汗がにじんでいた。


そして問馬のフルスイングが飛ぶ!


「フルスイングだぁぁっ!」


「くっ!」


譲介はかろうじて動く右腕でそれを防ぐ


だがそれと同時、譲介は腕の骨にヒビが入ったのを感じた。


(まずい…左腕は毒、右腕はヒビが入った!)


「問馬ぁぁっ!」


慧悟の袈裟が問馬の背中を捉える


(クソいてぇ…だが!)


だが問馬は譲介の腕を掴む


「!?」


そしてそのまま譲介を慧悟へ投げつけた!


「何!?」


(大きく振りすぎた!まずい!)


そして慧悟は譲介の下敷きになる


「がはっ!」


「ぐおぉっ!」


肋骨が更に深く内臓に突き刺さる。


「ゴフッ!ゴフッ…!」


遊馬は激しく吐血した。今まで以上に。


それを見た百合香は唖然とする


「そんな…慧悟さん…譲介君…!」


(剣さんがアコンシャス…そんなふうには見えなかった。なんでこんなことに…)


そのとき田蔵も状況を見ながら思考を巡らせていた。


(ワシは…)


言うまでもなく田蔵はSRベテラン構成員。


入隊してから今日まで大量のアコンシャスを狩ってきた。


先輩達から受け取った武器の使い方や発剄の使い方等の知識。アコンシャスの歴史。様々なことを学び、そして仕事に真面目に励んでいた。その中でアコンシャスを殺すことなど当たり前のことだった。


じゃが田蔵は今、直面している。アコンシャスのとらえ方に対する揺らぎを。


無論、SRトップとしては今すぐにでも剣と問馬を殺すのが正解なのだろう。だが、田蔵信蔵として一人の人間としての正解はなんだ?確かに剣はアコンシャスの血が紛れている。だが確かに優しさを感じた。彼の目が疑いなくそう言っているのだ。


考えるよりも先に体が動いていた


「やめんかぁぁぁっ!」


田蔵の鎖が問馬を押さえつける!


「!?」


「田蔵さん…!?」


田蔵は即座に駆け出す!


「慧悟!譲介!剣!問馬!武器を下ろせ!もうこんなことはやめにしろ!」


それを聞いた問馬は金属バッドをおろした。


田蔵の咆哮を聞いた百合香も駆け出していた。


そして慧悟の服をつかみ、言う。


百合香「慧悟さん…やめて…!もうこれ以上…剣さんを人じゃないって決めつけないで!!」


それを聞いた遊馬がゆっくりと刀を鞘に収め、変身を解除する。


「…………」


譲介と剣も変身を解除した。


田蔵は問馬の拘束を解いて、こういった。


「慧悟、譲介。お前達の気持ちは分かる。じゃが、剣は懸命にたたかっていた。剣と問馬の瞳にはいつも『人を助けたい』という覚悟があった!無駄な正義のぶつけ合いはやめるんじゃ!」


それを聞いた俺の脳裏にある記憶がよぎる。


「アトラとのたたかい。みとったぞ。お前には命を背負う覚悟がある。認めよう。」


「はい…!」


譲介のたたかう覚悟を田蔵さんに認められた記憶。


(そうだ彼らの瞳にもきっと俺や慧悟さんと同じ覚悟があった。)


「田蔵さん…すみません。」


種族の違いで、決めつけちゃだめなんだ。歪んだ正義を譲介達は持っていたんだろう。


すると剣がゆっくりと立ち上がる。


「聞いたで。譲介。お前親おらんやってな。」


「はい…」


「俺も親おらんわ。俺を守るために戦争で殺された。一緒やな。」


そういって剣さんは微笑んだ。


膝をつく譲介に剣さんは手を差し伸べる。


「立てるか?」


「大丈夫です…」


譲介は彼の手を掴みながら立ち上がる。その手からは温もりをかんじた。その時伝わったんだ。「敵じゃない」って。


慧悟も問馬と剣に謝る。


「問馬…すまなかった。お前が落ち着くように促してくれたのに感情的になって斬りつけてしまった。」


「応…大丈夫だ。じゃあ仲直りのグータッチだ!」


「グー……タッチ………わかった…」


2人の拳がぶつかる。


「こうか…?」


「そうだぜぇ〜!」


そういって問馬は慧悟の肩へ手を置く。


「よし!仲直りしたし!馬コンビ再結成だな!」


「馬コンビ…そうだな…!」


体は傷だらけだが二人の顔には確かに「仲直りの笑顔」があった。


それを見た百合香と田蔵は安心したように笑っていた。


「よかったな…」


「本当に…」


譲介達は夕焼けを背中に肩を組み合いながら帰った。


「そういえば今日、帰ったらモンストのイベントやらんと」


「俺もやりたいぜ!」


「いいですね!モンスト俺もやってます!」


「奇遇だな俺もモンストやってるぞ」


「おぉ!みんなもか!ワシもじゃ!」


全員が驚く。


「えっ、」


そして笑い出す


「ハハハハww!」


「おいまじかいな!こんなことあるん!?」


「まじっぽいぜぇ〜!」


「俺達ってやっぱ仲間みたいっすね!」


「当たり前だろ!!」


「じゃな!」


「ハハハハハハハハw!」


俺達は殺し合いをしてしまった。だが最後にはみんなの笑顔があったんだ。


次回 「戦友」

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