ズボラ幼馴染が何故かズボラを直さない
ポンビン
第1話「どうしてこうなった」
「ねえ
「はあ……」
どうしてこうなったのか。
それは二日前に
☆
「やっほー燐音、今日からよろしく頼んだ!」
なんて、私の幼馴染────
今日も、私の幼馴染は、太陽のような綺麗な長い金髪をしている。
この前「髪の手入れってどうしてる?」なんて聞いたら「え?何もしてないけど」なんて言葉が返ってきて殺したくなった。私頑張ってこの黒髪ロングを手入れして、これなのに。
「今日から……って何が?」
「あれ、おばさんから聞いてないの?私の両親海外旅行いくから、燐音の家にしばらく住むって」
陽葵の言う、おばさんとは私のお母さんの事だ。
「……聞いてない、まーた面倒臭いこと押し付けられた……」
「ふっふっふ、そんなこと言っちゃってぇ〜本当は私としばらく住めるの嬉しいんじゃないのぉ〜?」
気色悪いニヤ顔をしながら陽葵はそう言ってきた。たしかに友達や、幼馴染が泊まりに来るというのは他の人からしたら嬉しいのかもしれない。
────ただ問題があるのだ。
「だってあんたすぐ部屋散らかすでしょ、あと寝相悪いし────」
「あ、あー!もうわかったから!」
「何?あと10個くらいあんたの悪いとこ言えるけど?」
「調子乗ってすみませんでした……」
手を合わせ突き出し、お辞儀をするような形で陽葵はそう言ってきた。謝って済むなら警察はいらないんだよ。なんて言いたいところだが、こんなヤツでもいい所はあるので自重することにする。
「よい、おもてをあげるのじゃ」
「……たまに燐音って変なこと言うよね」
「……」
「あ、す、すみませんでした!だからそんな無言の圧を向けてこないでください!」
「もういいよ、ほらおいで、その重たそうな荷物早く置きたいでしょ」
ずっと玄関でこんな無駄話をするのも、あれなのでリビングに荷物を置きに行くことにする。後ろを見るとちょこちょこと陽葵が私の後ろを着いてきていて、髪色も相まって、まるで親鳥についてくるヒヨコのようだった。
「ねえ、陽葵……何日ここに泊まるの?」
「えー?知りたいー?だったら私のカバンから枕取ってー」
「……まあいいけど」
……枕?と思いながらカバンを開けるとそこにはカバンにきっちりと、今の季節にピッタリな桜色をした、枕がカバンの中に入っていた。
「……あんた、もしかしてこんなでかいカバン持ってきておいて枕1個しか入ってないわけ?」
「失敬な、他にも入ってるよ……カバンの横ポケット見なよ」
指示通りカバンの横ポケットを見るとそこには飴の袋が入っていた。しかし中身は入っていなさそうだった。何故なら、それは開封済みの飴のゴミだったからだ。
「これゴミじゃん……あんた、どれだけズボラなわけ?」
「ズボラじゃないし〜ゴミ捨てるのめんどくさいだけだし〜」
「またそんなこと言って……」
ズボラな所を直してもらわないとこの先大変そうだなぁなんて思いながら、時計を見ると、短い針が真上に指していて、昼時ということが分かった。腹減ったな。
「……陽葵、昼ごはん食べた?」
「食べてないよ、って言っても燐音の美味しいご飯が食べたかっただけなんだけどね」
美味しいご飯、という陽葵の発言について少し嬉しくなってしまったのは秘密だ。
たしか冷蔵庫には、卵とウィンナー、ケチャップがあったと思うからオムライスを作ろうと思う。
「……そ、とりあえず作るから、そのソファーで寛いでおいていいよ」
「てんきゅーりんねちゃーん」
「キモイ」
「えっ、酷い」
別に私は本気でキモイと言った訳ではなかったが、言われた本人は少し傷ついてそうだった。
「……別に、本気で思ってないから」
「知ってる〜引っかかった?引っかかったよね?私が今傷ついてそうな顔し────」
「今手に持ってる熱々のフライパンあんたの顔に投げてもいいけど」
「……ごめんなさい」
「よろしい、黙って待ってな嬢ちゃん」
私がふざける時は大体、陽葵が私に怒られてシュンとしている時だ。ふざけると大体、「燐音が珍しくふざけてる!」なんて、シュンとしている状態からいつの間にか笑顔になっている。
「はーい!」
ほら、今だって────
☆
「もうちょっとで出来るから机綺麗にしといて」
「えー」
「えーじゃないよ早くして」
「仕方ないなあ、陽葵ちゃんが片付けてあげますよーっと」
机を綺麗にするのを陽葵に催促したらやっと動いてくれた。学校ではしっかりしてるのに、と考えながら、ケチャップライスで積み上げられた山の上に、黄色の布のようなものを覆いかぶせる。ケチャップはお好みの量で、ってことでいつも自分で陽葵にかけさせている。
「いつも通りケチャップは自分でかけて」
「あいよー」
そういえば、陽葵の枕を取ってあげたのに、ここに泊まる日数を教えて貰ってなかった。これじゃタダ働きだ、ということで、普通に聞くことにした。
「そういえば、さっき言ってなかったけど泊まる日数は?」
「えーそれ聞いちゃう?多分びっくりするよ」
「びっくりしてもいいから早く教えて」
どうせ3日とか1週間だろう。陽葵の両親は子供を何週間も置いておくような人達じゃない。まあ子供というほど小さくは無いんだけど。
「ドゥルルルルルルルル……」
発表する前のBGM?のようなものを陽葵は口で言っている。あくしろよ
「遅い、早くして」
「デンッ!60日でぇーす」
「え?6日じゃなくて?」
「うん、10倍」
60日……?ということは、
2ヶ月??
「2ヶ月、ってまじ?」
「まじー」
「あんたの両親そんな長い間、子供置いてくような人達だったっけ」
本当に、陽葵の両親は陽葵のことを溺愛していて、そんなに長い時間置いとくような人ではなかった。
「いやーなんか?燐音ちゃんなら、うちのズボラ娘を安心して預けれるみたいなこと言ってたよ、ズボラなんて酷いよね」
「……いや、ズボラは事実だけど」
「燐音まで、みんなズボラ、ズボラってなんなの〜」
「事実だし」
「酷い!」
「酷くて結構、あんたのズボラ治せるなら寿命減ってもいいわ」
なんでもいいから陽葵には一人暮らしできるくらいの生活力を手に入れてもらいたい。いつになったら、こいつはめんどくさがり屋を卒業するのだろうか。
なんて遠い目をして、私はまだ半分残っているオムライスを食べ進めた────
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