第じゅうさん話 歩道

武佐士むさし

「さあ、目的地の大仏様まで、あと1キロぐらいだよ。」


(自転車の走行音)シャァー、カチャ、シュ、シュ、シュ


莉奈りな

【路肩が広い、車道だけど走りやすい。

いつの間にかペースも上がって、結構速いよ、負けないぞ!】

【オーバーペース?

無理をすると、後半でバテるから、

元気な前半こそ、ペースは抑えてね、って言われたけれど、

気持ち良すぎて、ハイテンションで、

もう、あたしを止められるものは何もないよ。】


莉奈りな

「あ!車!避けなきゃ!」

【路肩に止まっている車がいる。

みんなは車道に右に避けたよ。

でも、後ろからどんどん車が来るから、ちょっと怖い。】


莉奈りな

「左、行こう。」

【私は歩道から行こう、段差も無いし、広い歩道だから、こっちに避けよう、

早くみんなに追いつかなきゃ】

「あ!!!!」

【歩道に車椅子の人と付き添いの人!!!!

気が付かなかった!!!!

ぶつかっちゃうよ、間に合わないよ!】


(自転車が転ぶ音)ガチャガチャァァァン


莉奈りな

「いっったぁぁぁぁい、痛い!」

【腰が痛い、頭も擦って転がったよ、ヘルメット被っててよかったぁ】


介助の女

「だ、だ、だ、大丈夫ですか!?」


莉奈りな

「はぁ、だ、大丈夫です。」

【よかったぁ、人にぶつからなくて。そうよね?】


小学生一同

莉奈りなぁぁぁ!」

莉奈りなちゃぁぁぁぁん!」


莉奈りな

【みんな、戻ってきてくれた。】

「あ、ありがとう、なんとか、大丈夫みたい。」

【男の子の誰かが、引っ張って立たせてくれた、それよりも】


莉奈りな

「あのぉ、おばあさん、大丈夫ですか?」

【車椅子の人が心配、当たらなかったかな?】

【あれ、おばあさん、立ち上がって、こっちに来るよ。】


おばあさん

「あらあら、元気なお嬢さん、もうおうちに帰りなさい。

お母様が心配なさっているわ。

ほら、このお花を持って、お帰りになって。」


莉奈りな

「えっ。」

【小さな一輪のサクラ、ソメイヨシノ。どういうこと?】


介助の女

「ごめんなさい、うちのおばあちゃん、ちょっとボケちゃってるの。」


莉奈りな

「わ、私こそごめんなさい。ビックリさせてごめんなさい。」

【サクラを付き添い人に返そう。】


介助の女

「いいのよ、受け取って。その方が喜んでいるみたい。」


莉奈りな

【あ、おばあさん笑ってる。大きな体の素敵な笑顔。】


小学生一同

「さようなら。」


莉奈りな

【手を振っておばあさんを見送って、ちょっと腰が痛いけど、

サイクリング再スタートだ。】

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