第3話 SHE CAME AGAIN

 数日して、彼女は再び現れた。先日とは違う、でも一昔前の流行りであろう上品なワンピースを着て。そして無言で、初めに来た時と同じ席に座った。


「ご注文はいかがなさいますか」


 いつの間にか彼女の席に来ていたレオンが問う。


「——レモネードをお願いするわ」


 彼女は顔を上げず、静かに言った。


「かしこまりました。しばらくお待ちください」


 私は予想通りだと思った。二度目に訪れる選ばれた人は、最初と同じものを頼む。彼女もそうした。必ず深い理由がある。今回、私はそれを知る機会に預かることができるだろうか。


「お待たせいたしました」


 再び彼女の席に来たレオンは、静かにグラスをテーブルに置いた。


「ありがとう」


「それではごゆっくり」


「あの」


 再びカウンターに戻ろうとするレオンに女性は声をかけた。


「はい」とレオンは振り返る。


「…なぜ、レモネードなのかしら」


 彼女はレオンを見てはいない。テーブルを見つめたまま、静かに尋ねた。


「なぜでしょうね。お好きなように、思いましたから」


 レオンは優しく微笑んでいる。女性は早くも、違和感に気づいている。だが、それをどう形容したらいいのかもわからないのだろう。なぜ、これだったのか、偶然なのか、必然なのか。気のせいだとも思う中で、否定できない必然があるように思うのだろう。だからレオンに尋ねたのだ。


「——私にとって、レモネードは特別なの」


 そこで女性は顔をあげる。


「不思議だわ。この味——」


 レオンはただ静かに優しい眼差しのまま、彼女を見ている。彼女の不思議そうな顔の理由を知っているかのように。


「私の作るレモネードにそっくりなのよ」


 彼女はそう言った。


「それをあなたが、なぜ作れるのかしら」


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