第26話「妹の囁き」 draft ver.
闇の中に、一筋の光が揺れていた。
その光の中に立っていたのは――蒼の妹、玲奈だった。
「……れ、玲奈?」
蒼の声は震えていた。
玲奈は微笑んで、手を差し伸べる。
「お兄ちゃん……もう、がんばらなくていいんだよ」
その声音は優しく、温かかった。
しかし同時に――どこか底知れぬ冷たさを孕んでいた。
「忘れれば、楽になれる。
一緒に来て……ずっと、一緒にいよう?」
蒼の胸に、甘美な誘惑が流れ込む。
もしこの手を取れば、苦しみも、痛みも、後悔も消える。
玲奈と共にいられるのなら、それは救いに思えた。
だが。
「……違う」
蒼は静かに首を振った。
玲奈の瞳に、影が揺れる。
「忘れたくないんだ。
どんなに辛くても、後悔しても……お前と過ごした記憶は、俺の大切な宝物だ」
玲奈の幻影が揺らぐ。
影が牙を剥き、甘い囁きが叫び声へと変わった。
「だったら――苦しみ続ければいい!!!」
黒い奔流が蒼に襲いかかる。
その瞬間、紗夜が飛び込み、光の刃で闇を切り裂いた。
「蒼! 迷うな!」
彼女の声が、蒼の心を再び現実に引き戻す。
「……ああ。行こう。玲奈を、影を――終わらせる」
二人は並び立ち、迫り来る闇に立ち向かう。
最終決戦は、すぐそこまで迫っていた――。
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