第6話 記憶の迷宮

蒼が本を開くと、広がったのは歪んだ教室。

机や椅子が宙に浮き、外の景色は黒く滲んでいる。


影が立ち上がり、囁いた。

『……おまえは、忘れろ』


胸の奥を掴むように冷たい声。


——「お兄ちゃん」。

妹の声が、影の中から確かに響いた。

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