いきてた
ㅤ身体を起こすと、私の布団は雪に覆われているようで異様に重たい。いくらか溶けてしまって、布団と服と下着、筋肉に水が染みていく。
ㅤ申し訳ないな、妹よ。私の部屋はびちょびちょになってしまったみたいだ。
ㅤ今日は気分が良くも悪くも無かったので、窓から飛び降りることにした。いつの間にか着替えが終わっていたので、そのまま学校の場所へなんとなく歩く。
ㅤ今日は鯨が雲の上を飛んでいる。刺激しちゃうと雨が降るから気をつけないと。
ㅤ今日は道が真っ直ぐ舗装されている。街路に生えるぽよんぽよんとした水玉は手を突っ込むと気持ちがいい。
ㅤ歩いていくと、程なくして学校まで着く。校門は無表情で私たち生徒を飲み込んでいく。
「あ〜!一歳さーん!」
ㅤ...はあ。
「よかった〜...生きてたんだね!」
ㅤ...昨日の夢のことだろうか。ぽわ〜んとしたオーラが彼女から放たれているのを感じる。なんというか、ほら、あれだよ...私には学がないからなんていえばいいか分からないや。
ㅤまあ、本当に同じ夢を見ていたにしても、私を殺したとしても、私の気にすることじゃない。
ㅤ昨日のように無視を決め込んでしまおう。
「昨日お昼寝してたら一歳さんが出てきてさ、夢の中でも会えるとか、運命だと思わない?」
ㅤ地面には黒ずんだ花弁が落ちている。役目を終え、後は土に還るのみのものたちが。
ㅤ辺りを見渡すと、赤紫色のオーラが昨日よりも鮮やかで眩しい...あ、一緒にいるグループの中に昨日の代表スピーチの子が居る。あの子、何考えてんだろ。何も浮かんでないせいで全く想像がつかない。
ㅤその点私に付きまとってるやつは常に吹き出しが出ているもんで、わかりやすい。どうやら昨日の雪合戦の途中で私が死んだのを憂いているらしい。
ㅤ夢の中で大して知らない人間が死んだだけなのに、なぜそんなことをずっと考えているんだろう
ㅤ私が考えても仕方ないな。そう思い教室に行く。
ㅤ教室は、昨日の平原とは打って変わって、お茶会パーティの会場になっていた。
ㅤ既に幾つかのグループができているらしく、複数人でテーブルを囲んでお互いの声を飲み、話題を口に放り込んでいる。
ㅤ隣の席の小さな子は既に4人でテーブルを囲んでいて、一つ一つの
ㅤ4人内の一人、背の高い子の発する言葉は異様に眩しくて、中身がよく見えなかった。まるで誤魔化すように光っているそれは触れてはいけないような気がして、それにぶつからないように注意した。
ㅤふと、自分の席を見やると、そこにもティーセットが置いてある。
ㅤ私の前の席の少女はなおもこちらに向きながら、聞いてもいない話を話し続けている。私から何も発さないためか、ティーカップは空っぽで、つまむ茶菓子も無いようだ。
ㅤ対して、私の方には過剰な程に置いてある。きっと私はこれを頂いて、他のと同じようにそれらしい会話をするべきなのだろう。
ㅤだけど、それは私の知ったことじゃない。そんなうちに私の席は茶と菓子で洪水が出来て、靴がびしょ濡れになってしまった。
ㅤそれでもお構い無しに続ける彼女は、期待の眼差しで私を見つめていて、吹き出しからも、女子高生らしい会話をしたいことがわかった。
ㅤ私にハートマークが溢れるような可愛らしい会話をする能力も、する気も無いけれど。なぜ私に執着するのか、それだけが全く分からなかった。
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