第11話 一歩目

放課後、生徒会室。

机の前に並ぶAster《アスター》の8人。

「お願いします!アイドル部を作らせてください!」あかりが元気いっぱいに叫ぶ。


結衣ゆいは困り果てた。

「私に言われても……」

「生徒会書記やん?なんとかしてよ!」

「そういう問題じゃないの」


担当の先生が静かに申請書をめくり、険しい顔で告げた。

「部活動としての認可はできんねー。前例がないもんねー」



「却下ぁ!?」

 机に身を乗り出す光。


「なんでですか!青春してますよ!若さ!情熱!輝き!」


「それは勝手にやってもらって」


生徒会室に戻ったAster。


「……残念ね」瑠璃るりが淡々と肩をすくめる。

一同重苦しい空気の中、クスクスとはなは笑っていた。

「じゃあ……勝手にやろっか」

「先生も『勝手にやって』って言ってたし」


「賛成!根性で続ければいいんや!」煉佳れんかが叫ぶ。

「バリやば、最高の発想やんw」莉愛りあが大笑い。


「ちょっと!勝手に動いたら問題になるわよ!」結衣が制止するが、

「えー、結衣ちゃんだって楽しそうに見えるよ」心春こはるもにっこり。

「わ、私は……!」結衣が赤面して口ごもる。


日菜ひながぽそっと呟く。

「宇宙も、最初は無秩序から始まったんだよ」

「宇宙は関係ない!」結衣のツッコミが飛んだ。


結局――Asterは「フリーアイドルグループ」として活動を始めることになった。



生徒会室。

結衣が書類を整理していると、クラス担任の先生が顔を出した。


「そういえばなんやけどな、学園祭のステージ、まだひと枠空いとるんよね。お前たちアイドルやっとるんやろ?やる気があるなら……お前たち、出てみんや?」


「えっ……わ、私たちが!?」結衣が思わず声を上げる。

どこからともなく顔を出した光と花が同時に叫んだ。

「やります!!」


「ちょ、ちょっと待ちなさい!まだ何も……」

結衣の抗議を無視し、光は興奮して走り回る。

「やったー!初ステージだ!」

「わぁ……ほんとに……!」花も顔を赤らめる。


結衣の制止を振り切り光と花が報告に行く。


「バリやば!ステージデビューやん!」莉愛が机を叩き、

「根性ー!」煉佳が拳を振り上げる。


「……。」蒼葉あおばは相変わらずだが、少し緩んでいるようにみえる。

「やっと決まりましたわね」瑠璃が渋い顔をする。

「も、もう!勝手に決めてから!」2人を追いかけた結衣が叫ぶ。


そんなドタバタの中、日菜がぽそっと呟いた。

「ステージは宇宙だから……」

「日菜は静かに!」結衣が即遮る。


「でも、問題があるわ」結衣が深刻な顔に戻る。

「ステージに出るなら……まず衣装が必要でしょ?」


全員が一斉に固まる。

そして――。

「「「「作るしかない!!!」」」」


こうして急遽、衣装作りが始まるのであった。

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