第10話 私たちって?

放課後の教室に9人が集まった。

机をくっつけて輪になり、ノートやスマホ、辞書まで広げて「グループ名会議」が始まった。


「やっぱり名前って大事やろ!根性感じるやつがいい!『根性☆ファイターズ』!」煉佳れんかが拳を握る。

「体育会なノリはあんまり……」心春こはるがツッコム。


「バリやばって入れようや!『バリやば★アイドルズ』とか!」莉愛りあがノリノリで提案する。

「絶対イヤ!」全員が声を揃えた。


「机と宇宙は繋がってるから……『机銀河』」

日菜ひなも真面目に!」結衣が即座に制止。

「でも、眠ると宇宙に…」

「うるさい!」結衣の厳しい制止に寂しさを覚える日菜。


皆んなの視線は黙々と絵を描いている蒼葉あおばに向く。

「……今描いてるから」蒼葉がぼそっと呟く。

「え、それ良くない!?『今描いてるから』!」莉愛が爆笑。

「良くないから!」結衣と花が同時にツッコむ。


その後も、「シルバー☆ナイト」とか「チャレンジャーズ」とか案は出るが、どれもしっくりこない。

空気が停滞しかけたとき、はながふと辞書をめくって呟いた。


「あ……“Aster《アスター》”。ラテン語で星って意味……」


「星!」日菜が突然大声を上げ、全員がビクッとした。

「急に大声出さないで!」結衣が心臓を押さえる。


「でも……Aster、いいね」あかりが目を輝かせる。

「シンプルで分かりやすいし、星座みたいに9人を繋げる感じがする」花も笑顔で続ける。


「うん、私たちがその星座になるんやね」心春が真剣な眼差しで言った。

「……まぁ、悪くないわね。星は秩序正しく輝くものだし」結衣も渋々頷く。

「星なら宝石とも相性がいいですわ」瑠璃るりが微笑む。


「決まりね。私たちは――Aster!」結衣が宣言する。


「よっしゃー!決まりやな!」煉佳が立ち上がり、莉愛も「バリやばネームきた!」と叫ぶ。

蒼葉は無言のままスケッチブックに「ASTER」と書き殴った。


こうして――

9人組アイドルグループ「Aster」が誕生した。

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