⑩信じたい
「・・・・・・それは本当に?」
蓮也の言葉に苦笑いを浮かべてしまう。そんなに信用がないのか、と思ってしまったが、まず、現状がハイリスクな状況でそうそう簡単に信用なんて、できないか、と察した。
「嘘なわけあるか。・・・・・・勿論、本当にそうなるとは限らない。でも、きっと君達がこの任務を完遂できると信じている」
嘘だけど嘘じゃない。嘘はついてはいない。
君達が任務を遂行できるとあの人達は信じているけれど、その確率に出会えるとは僕は心の底では思っていない。
「本当は全てを犠牲にして、仲間を全て失って、家族との縁は完全に切れて、何もかもを失ってやっと成功することだけど、君達は何も失わないと決めている」
覚悟を決めたって何をしたって。
「君達は甘い。そんなことで此方に来ようとするなんてあり得ない」
そんなことは無理だって、思っている。
「でもそんな甘い君達が成功すると信じてる。何故だか、分かる?」
それでもどうしても。
「あの人達がそれを信じていたから」
ただ、ただ、『あの人達』の言葉を信じたいから。
「そして、僕が君達のことが好きだからだよ」
僕はやっぱり諦めきれない。
「───僕にここまで言わせたんだから。『「お前の」あの人との約束』くらいは守れよ、蓮也」
僕の言葉に蓮也は小さく目を見開く。でも、すぐに溜息を一つつくと、勿論だと親指を立てて満面の笑みで頷いた。
やっぱり調子が狂う、蓮也といると。こんな緊張感が必要な場面でそんなことをするやつなんて。
「・・・・・・じゃあ、もう帰らせてもらうよ。お迎えが来たみたいだし」
「「は?」」
蓮也に真っ直ぐにこちらを見るのが居たたまれなくなり、 僕がそう言えば、二人は腑抜けた声と顔を僕に晒した。
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