私ってば、どの世界でも輝いちゃうんだから
4年ぶりの聖霊界。
まさか、またこの場所を訪れる日が来るなんて。
ゲートをくぐった瞬間、胸の奥がぞわりと震えた。目の前に広がるのは、あの頃と変わらない空、輝く都市。そう、ここは聖霊たちが暮らす異界都市――かつて私が英雄として称えられた場所だ。
(まったく……私ってば、どの世界でも輝いちゃうんだから)
いや、そう思えるのはきっと私だけだ。今の私は、正義の象徴でも救世主でもない。
どちらかというと、悪のボス。エターナル・カオス・システム、略してECSを率いる
でも、それでもいいのよ。正義だろうが悪だろうが、世界の中心に私がいるならそれでオールオッケー!
今回の訪問は観光でも郷愁でもない。
目的は明確――“新世代魔法少女たちの使用する魔法技術”を探ること。
そしてその技術を"参考にして"、ECSの技術に取り込むこと。
潜入先は、聖霊界の研究チーム。
ちょっとした再訪という名目で堂々と入り込み、内部から最新の魔法技術を観察・分析する作戦である。
……いや、スパイ行為では?という意見もあるかもしれないけど、私は天才なので問題ない。
何より、私はこの地では未だ“信頼されやすい存在”なのだ。
最年少で魔法少女チームをまとめ、世界を救った英雄。
今なお語り草になるレベルのカリスマと実績を持ち、どの部署に顔を出しても「灯さん!」と歓迎される。
それに――「侵略者が再び活動を開始した」
このニュースが流れた今、私のような“元・戦う英雄”に話を聞きたい、頼りたいという流れが自然に生まれている。利用しない手はないわよね?
というわけで。
私は今日から、“正当な技術交流”という名のスパイ活動をスタートする。
もちろん、目的はただひとつ――エターナル・カオス・システムを、もっともっと強く、最強の組織に仕上げるために!
ふふふ、さあ、研究チームの皆さん。
私にいっぱい教えてちょうだい? “自称・天才”じゃなく、“本物の天才”ってやつが何か、たっぷり見せてあげるんだから!
「灯、よく来てくれたね」
聖霊界の研究施設に足を踏み入れた瞬間、白衣姿の研究者たちが笑顔で迎えてくれた。
きらきらと光る魔導スクリーン、浮遊する研究端末、空間に等間隔で配置された魔法陣ホログラム……うん、変わってないわね、ここ。懐かしさすら感じる風景。
「新たな魔法少女が誕生したけど、敵の活動も活発になってきた。4年前の戦いで滅んだと思っていたけど……どうやら、そう簡単には終わらなかったようだね」
「ええ、やっぱりそういうものよね」私は頷く。「戦いって、完全に終わることはないのよ」
おっと、ここでちょっと神妙な顔を作っておく。よし、バッチリ。表情コントロール完璧。
「私にも責任があると思うの。4年前、私は“滅ぼした”つもりだった。でも、結果的に生き残りがいて、今また被害が出ている。だったら、私にできることがあるはずでしょう?」
(――完璧な理論展開!)
見よ、この天才的な自己正当化!! これは誰にも否定できない“元ヒーロー”ムーブでしょ!!!
研究者たちは真剣な面持ちで、ゆっくりと頷いた。
「その言葉、頼もしいよ。灯が手を貸してくれるなら、これほど心強いことはない」
「ふふっ」私はにっこりと微笑む。「私は元魔法少女だし、戦闘データも提供できるわ。新魔法少女の技術がどういうものなのか、一緒に研究できればと思うの」
「なるほど……たしかに、灯には魔法武器の知識もある。君の知識と経験は、我々にとって大きな助けになるだろう」
(――はい! 完全勝利!!)
私は心の中でガッツポーズ。
ガードはガバガバ、信頼度はMAX、スパイ活動の土壌は整った!!
結果:疑われることなく、あっさりと研究チームに潜入成功。
あーもう、自分が怖いわ……!
やっぱり私って、信頼されやすいんだから!
この信頼を、たっぷり有効活用させてもらいますね――悪の組織のボスとして!!
聖霊界の研究施設――そこは、私にとってかつての“ホームグラウンド”だった。
整然と磨き上げられた白い床。空中に浮かぶ魔力表示インジケーター。魔法エネルギーが流れるパイプの輝きと、時折発せられる仄かな反応光。空気のひとつひとつまでが、緻密な制御によって保たれている。
……うん、見た目は変わってない。懐かしい景色。
でも、4年ぶりに足を踏み入れた私は、ドアをくぐった瞬間こう思った。
「やば……めっちゃ進化してるじゃないの……!!」
ガラス張りの研究エリアの向こうには、新型の魔法武器がずらり。
今まさに実験中のものや、すでに新世代の魔法少女たちが使用している“チート武器”たちが、神聖なオーラを放ちながら展示されていた。
研究員の一人が、白衣の袖をたくし上げながら説明してくれる。
「この新型武器は、魔力伝達のロスを最小限に抑えて、エネルギーを一点に集中できるように設計されているんだ。出力の安定性と継続力も大幅に改善されていて……」
「へぇ~、なるほどねぇ~」
私は軽い調子で相槌を打ちつつ、じっくりと内部構造に目を凝らす。
(……ダメだわ。これ、ECSの技術じゃ到底再現できない)
構成式の密度、回路の魔法式、そして魔力の流れを制御する素材の配合……全部が段違い。
これは“魔法技術”というより、もはや魔導芸術の域。
私は周囲をぐるりと見渡し、誰にも怪しまれないようにそっと手を伸ばす。
「ちょっと触らせてね♪」
いつもの軽口モードで、最新武器のグリップに手を添えた。
研究員たちも笑顔で頷くだけ。ああ、信頼って便利。
ふふん。だから聖霊界って、甘いのよね。
指先から伝わる魔力の脈動に、私は思わず眉をひそめる。
(やっぱり……すごい)
魔力が、まるで水のように滑らかに、そして正確に武器内部へと流れ込んでいく。
普通なら2~5%はロスが出るはずなのに、こいつは限りなくゼロ。限りなく100%に近い魔力伝達効率。
つまり――魔法少女が「チート」なんじゃない。武器が「チート」なのよ!!
性能の暴力。設計の暴力。天才の暴力(ちょっと私寄りの表現)。
でも何より――これを“手に入れれば”、ECSはもっと強くなれる。
ニヤリと口角を上げながら、私は心の中で呟く。
「……よし。参考にさせてもらうわよ。たっぷりとね」
私は、しばらく無言で最新型の魔法武器を弄んでいた。
外装の構造は完璧に頭に入っている。内部魔力循環の設計も、おおよそのラインは見えてきた。
だが。
(……なんでここ、こうなってるの??)
問題は、コアと出力制御部を繋ぐこの不可解な部分。
完全に理解不能。
いや、ちょっと待って? 私って、天才よね?
どんな複雑な魔法構成式も、一度見れば再現できる万能型美少女天才のはずよ?
それが、なによこれ!? 意味不明な構成式が唐突に挿入されてる!?
構成式の中で式を参照して、それをさらに再変換してる!? 魔力の流れのくせに概念演算挟んでくるとか何それ!?!?
……ダメだわ。私の天才的な頭脳でも、マジでさっぱり分からない。
(このままだと……持ち帰っても再現できませんでした☆ってオチになる未来しか見えないじゃない……!?)
焦りが汗に変わる前に、私は深呼吸してニッコリ微笑む。
平静な顔をしてるけど、内心は超焦ってるわよ!!
でも、ここで諦める私じゃない!!
私は研究員の一人に、軽く肩を叩いて話しかけた。
「ねぇねぇ、ここってどういう仕組みなの? このあたりの流れ、ちょっと普通と違う感じがするんだけど?」
「お、いい質問だな。ここの部分はね……」
食い気味に返事が返ってきた。ラッキー!!
研究員はまったく疑うことなく、ぺらぺらと解説を始める。
しかも、意外と嬉しそうに。
やっぱり技術屋って、語らせると長いタイプ多いのよね~!
「ここがこの素材を通ると、属性の干渉が最適化されて……それと、この魔法陣の層構造、二重じゃなくて三重構成になってるのがポイントなんだよ」
なるほど……なるほど……わかるわけない!!!
いや、わかってるふりはしてるけどね!?
でも聞いてるうちに、見えてくる。少しずつ、頭の中でこの武器の全体像が繋がっていく――。
(これは使える……! このデータ、ECSに持ち帰れば――)
私はさらに畳みかけるように質問を連発する。
「この接続部の強化って、どういう材質で? ここの安定式って、もしかして計算式変えてる?」
技術者たちは、ますます興奮した様子で説明を続けてくれる。
私は笑顔を崩さずに、脳内では全力で情報を記録していた。
(よし……このままいけば、聖霊界の最新技術を"参考"にした新魔法武器、いけるわ!)
私は心の中でガッツポーズを決めながら、さらなる質問を開始する。
この調子で根こそぎ吸収して――ECSを、超絶チート組織にしてやるのよ!!!!
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