……完璧な計画だったはずなのに!!!!!!!!!!!!

 街のスクリーンに映し出された、歪む光。

 黒い影がいくつも、ゲートの裂け目から降下する。空気がびりびりと震え、異世界の力がこの地に満ちていくのがわかる。

 ECS生体兵器、降臨。


 はぁぁ……ついにこの瞬間が来たわね……!

 私はモニターの前で足を組み、ぶどうジュースの入ったグラスを片手に、優雅にその様子を眺める。


 生体兵器たちは次々と着地し、周囲の車や街灯を薙ぎ払い、道を埋め尽くしていく。建物の窓ガラスが粉々に砕け、吹き飛ばされた車がビルの壁に突き刺さる。地面が割れ、瓦礫が舞う。


 ……いいわねぇ。実に悪の組織らしい光景じゃない?


 市民たちが次々と逃げ出していく。


「うわああああ!!!」


「なんだあれ!? 」


「やばい、逃げろ!!!」


 混乱、恐怖、絶望。

 素晴らしい。実に素晴らしい!!!


「ふふ、これよ……! これが私の求めていた光景!!!」


 私はグラスを傾け、満足げに微笑む。

 ここまでの計画、すべて完璧。

 まず、生体兵器を投入する。

 → 街が混乱する。

 → 人々が恐怖する。

 → そこで「ヒーロー」として私が登場!

 → みんな私を称賛!!!


 ね? 天才的な作戦でしょ?

 さぁ、そろそろ頃合いかしらね?

 私はゆっくりと立ち上がり、軽く肩を回す。


「……よし、そろそろ私が"正義の魔法少女"として参上するか!」


 今こそ、再び歴史に名を刻む時――。


 私は指を鳴らし、変身の準備を――。




 ――”ズドォォォォォォォォォォォン!!!! ”



 「……は?」


 モニターに映ったのは、私の生体兵器が一瞬で消し飛ぶ映像だった。


 え?

 ちょっと待って、え?

 なんか今、すごい光が走ったんだけど!?!?

 しかも、次の瞬間、次々と生体兵器が蒸発していく!!??!?


「…………はぁ?」


 私は目をこすり、もう一度モニターを見た。

 そこには――見たこともない魔法少女たちが、生体兵器を次々と撃破する光景が映っていた。

 あれ?  私、呼ばれてないんだけど???


 ……ねぇ、どういうこと???


 モニターに映る光景が、私の想像とはまるで違っていた。

 いや、確かに、戦場が混乱するのは計算通り。ECSの生体兵器はそこそこ頑丈だし、いきなり全滅することは……。


 ……いや、してるんですけど!?!?!?!?!?!?!?!?


 なんかもう、画面の中では私のかわいい生体兵器たちが、次々と粉々にされてるんだけど!!?


「ちょっと待って、え、は????」


 思わずモニターに顔を近づけて確認する。いや、視力はいいから映像が見えてないわけじゃない。じゃあ、これはなんなの???


 そこにいたのは、二人の少女。

 一人は白銀の髪をなびかせ、無造作に剣を振るっている。いや、無造作って言うと語弊があるわね。動きは流れるように洗練されていて、まるで戦闘が"日常動作"の一部であるかのような、そんな軽やかさ。

 彼女の動きに翻弄されるように、生体兵器たちはひとつ、またひとつと爆発四散していく。


 「よし、これならまだまだいけるよ!」


 まだまだいけるじゃないわよ!!?

 わんこそばじゃないのよ!?


 もう一人の少女は、遠距離から精密射撃を放っていた。

 手にした魔導砲から発せられる光線が、寸分の狂いもなく生体兵器たちの急所を撃ち抜いていく。

 しかも、適当に撃っているわけじゃない。彼女の動きは極めて論理的で、こちらの生体兵器がどのように動くか、どのタイミングで攻撃を仕掛けるか――すべて計算した上で撃っている。


 私は、モニターを食い入るように見つめた。

 新世代魔法少女たちが、想像以上の強さを見せ始めていた……!!!


 「たんま!!!!!」


 「ストップ!!!!! ストップストップ!!!!」


 「だれか時間を止めてえええええ!!!!!」


 私はモニターの前で絶叫していた。

 だって、これはありえない。

 これは現実じゃない。

 こんなの、何かの間違いよね!?


 ……いや、ちょっと待って。


 これって……。


 戦闘というより、処理じゃない?


「……こりゃ、俺の出番か」


 モニター越しに聞こえてきたのは、ゼーベインの重低音ボイス。


 彼は、ECSの武闘派幹部にして、戦士としての誇りを持つ男。単純な戦闘力では間違いなくトップクラスで、あのタカ派のイングリットですら「生粋の戦士」と認めるほどの実力者。

 彼なら……そう、彼ならやれる! ここで新魔法少女を叩いておけば、私が登場する前座としては完璧!!

 私は期待しながらモニターに視線を戻す。


 結果――ゼーベイン、一蹴。


「……へ?」


 ゼーベインが、吹っ飛んだ。

 いやいや、ちょっと待って待って待って!? あのゼーベインが!?!?

 しかも、あのわんこそば剣士の方……あの子が、たった一撃でゼーベインを地面に叩きつけた。


 何が起こったのか、一瞬理解できなかったけれど、次の瞬間にはゼーベインが瓦礫の中に埋まっていて、あの剣士が「そっかー、まぁまぁ強いねー」とか言ってるのが聞こえた。


「いや、強いのそっちだから!?!?!?」


 私は、震える手でモニターを指差しながら、幹部たちを振り向く。


「ちょっと待って、なにあれ!?!?!?」


 幹部たちも、私と同じように呆然としていた。


「……あれは……新世代の魔法少女……?」


「こんなの……聞いてないぞ……!?」


「まさか、こんな短期間でここまでの実力を持つ奴が……」


 ……あまりの衝撃に、私の手が震えた。


 グラスのワイン(ジュース)が揺れ、中身が零れる。


 「お、おおおおお落ち着きなさい!!!!!」


 「いや、アンタが落ち着けよ!!!!」


 即ツッコミが入るが、今はそんなことどうでもいい!!!

 そうだ、落ち着くのよ、私!!!!!

 私は天才!!! 天才である私に動揺はない!!!!!!


 「……」


 スッ、と一瞬で気持ちを切り替える。


 「よし、大丈夫。私は冷静よ。」


 「急に落ち着くな!!!!」


 周囲が驚いているが、知らない。

 動揺している暇なんてないの!!


 でも! でも!! でも!!!


 うん、そうよね、そうよね!?!? こんなの誰も聞いてないわよね!?

 私は思わず立ち上がる。

 だって、これは予想外すぎる。


「……ねえ、ちょっと待って? これ、私の出番、完全になくなってるんだけど!!???」


 私は、ここまでの計画を振り返る。

 まず、生体兵器を投入する。

 → 街が混乱する。

 → 人々が恐怖する。

 → そこで「ヒーロー」として私が登場!

 → みんな私を称賛!!!


 ……完璧な計画だったはずなのに!!!!!!!!!!!!


 なんで!? なんで私が登場する前に、もう戦闘終わりそうになってるの!?!?!?!?!?



 私はただ、唖然とするしかなかった。

 こんなの、想定外すぎる。

 でも、こうなった以上、私には二つの選択肢しかない。

 このまま計画を諦めるか。

 この「最強の魔法少女」を攻略するため、さらに強くなるか。


 私は拳を握る。


 「……よし。なら、私も研究するしかないわね!!!」


 ここから、私 vs 新魔法少女の戦いが本格的に始まる――!!

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