第3話 断固拒否します!

取り敢えずさっきから私の肩を思いっきり揺さぶる失礼な輩が居ますね、こまったもんですよまったく…

あまりにしつこいので渋々目を開けると、その揺さぶっている人物が

「起きた?」

と言ったので、目をシバシバさせながらしっかり相手を見ようとしたけど、直ぐに視界から外れる失礼な輩!視界がはっきりしてまず見えたのは天井。

これが知らない天井!!??などといきなり意識が覚醒した私【白上夜風しらがみ よかぜ】です!!


「…という感じですよ?」

と心の解説に現実の私が解説終わりの文章を口にした。そして首を回しながら辺りを確認したのだが、見る限り周りには人が居ないらしい。でもそこは見覚えがある。知らない天井ではなかったというオチなのだがここは保健室だと分かった。陸上部の練習で怪我をしたときに何度か来たことがあるからである。

「って私倒れたのかな?だからあんなクソみたいな夢を…」

と現状を頭で纏めつつ口からの声で納得しようとしたのだが…現実はそう甘くなかった。

さっきから、視界の右上に『あのメイド』がおかえりなさいませポーズで頭を軽く下げている。そしてゲームの停止ボタンを押したように完全に動きが固定されているようだ!

「う、うおおおおおおお!!!!」

自然と口から雄たけびが上がる!そしてそのままヘッドバンギングを始めた!

「お前が動かないか!私が動かなくなるか!どちらかだああああーーーーー!!!!」

必死に私は頭を寝ながら上下左右に振り、視界の隅の固定メイドを払いのけようとした!!!

結論から言うと、無駄でした…


ゼハ―ゼハ―…


息も絶え絶えになりながら再びベッドに横たわった。すると

「ちょっと夜風!!何騒いでるのよ!!ショック症状!!??っぷ!」

と廊下から親友の【伊藤里美いとう さとみ】が走って入ってきた。でも顔が半笑いである。

「里美?今笑ってなかった???」

と心配する顔ではなく笑い顔だったため、私は一瞬友情を疑ったのだが、

「うん、めっちゃ髪が凄いことになってる っぷ」

と素直に笑ったことを認めるのだった。実にけしからん!!親友が倒れていたのに会って早々笑うだなんて!!と思ったのだが、里美の手に菓子パンが収まっているのを見て「私の見舞いにわざわざパンを持ってきてくれるだなんて。それもクリームパンだそれ。嬉しい」と仏心が怒りを収めてくれるのだった。

パンを受け取るために立ち上がろうとしている私を里美は制止し「ちょっと寝てたほうがいいよ?」と言って来た。

「うん」と私は素直にベッドに体を預けると、里美はベッド横のパイプ椅子に座り、里美はパンの袋を開けた。


(うわ!里美、食べさせてくれるの!?なんだか泣けてくるなあ…さっきは散々な事を思ってしまってごめん)


と反省しつつ、目を閉じて あ~ん と口を開けて私は口に放り込まれるであろうクリームパンを待った。


「もしゃもしゃ、ところで夜風、そろそろ三時間目が始まるけどどうする?今日は家に帰る?」

「って里美!あんたが食べるんかーーーい!!」


てっきり私に食べさせてくれるパンだと思っていたのに里美はサッサと自分の口に収めていた!

「当然よ。これ私の朝ごはんなんだから ゴクン」

と何事もなかったようにクリームパンを完食し夜風に向き直った。


「現実はクソだ…友情なんて幻想だ…『あ~ん』とか言って食べさせてくれるシーンなんて漫画やアニメだけだ!!してたら希少種だよ!!」

と私は半泣きになりながら何も入っていない口をパクパクさせた。


「空気は美味しい?」と普通の顔で言う親友(疑)。

「うっう…帰りたい、産まれる前に帰りたい…」とシーツに包まれながら全私が泣いた。

視界が歪む、が、目の中のメイドは歪まない!!


(ってお前なんじゃーい!?)


と僻ひがみながらも結構冷静に頭が回っていた。

そう、目の中のメイドは先程と変わらずあの態勢でこていされているのだった。


(ってまてよ?さっき朝一番で里美を見た時このメイドは現れたり消えたりしてたよね?じゃあ今、里美を見るとどうなるのかな?)


と疑問が湧き上がってきた。私はその疑問と好奇心に負けて、そっとシーツから顔を出して里美を見た。


「っていないんかーーーい!!」


本日保健室では三度目の叫び声が上がった。

どうやら里美は私よりも授業を優先したらしい。実に親友(疑)である。叫び疲れた私だったけれど、ここで寝ていても仕方がないと思って体を起し頭を振った。

相変わらず視界の右上にはあのメイドが鎮座している。座っていないが鎮座している。


「…確か『鎮座』って神様に使う言葉だよね?」


などと自分の考えを突っ込みながらも、取り敢えずこのメイド(仮)は無視しながらベッドから立ち上がった。するとその視界に居るメイドがポーズ状態から解放されたのか、一度深くお辞儀をして後ろを向いた。


「あれ?動くぞこいつ?」


いきなりのアクションに私は混乱しながらこのメイドのマニュアルが無いか辺りを見渡したが、そんな便利なものはなかった。きっと製造主は不親切なのだろう。


「いやいやいや、これ視点では私がロボだから。こいつがパイロットになるじゃないこれじゃ…うん、里美に借りたブルーレイが全部悪い、里美が悪い」


とアニメ漫画脳の自分の落ち度を親友(だった人)の所為にした。

そしてベッドから降りた私は恐る恐る動いた。するとどういう事か、目の中のメイドも同じように歩き出す。まるで私の数歩先を歩いているかのように、そして私を誘導するかのように。

保健室を見渡すと先生は居らず、入口付近の利用書に名前を書いて退室時間を記入して廊下へと出た。

視界のメイドは私の数歩先、そして私を導くように歩いている。驚くことに曲がるところではそのメイドが先に横を向き曲がる方向に体を向ける。


「…マジでこれ何なのよ…」


としか口から出てこなかった。今朝は愉快な格好をしていたメイド。それがメイド然として私を導いていた。


「I字バランスの意味は?」


と今と今朝の落差から自然に口から零れた。すると目の中のメイドは何故か顔を赤くしていたが行動にブレはなく未だ私を導いていた。


「…って聞こえてるじゃん。何か言いなさいよ?」


と強制的に視界の右上の謎メイドに話しかけたが、それ以降反応は無く、ただ粛々と私の進む方向を導くような動きだけをしていた。気が付くと私は自分のクラスに到着していた。先程の里美との会話から今は三時間目だとわかる。中から国語の先生の声が聞こえてきたからだ。私は教室の後ろからそっと入り


「すみません…保健室から戻ってきました~」


とバツが悪そうに自分の頭を撫でつつ言った。すると教壇の富田先生はこちらを目配せして「大丈夫なの?」と言った。私は「はい」と応えてそそくさと自分の席に座った。

「白上さん、無理ならいつでも言いなさいね?…では、54ページの3行目から、井上さん」

先生はそのまま授業を続行したが、隣の席の里美は私を見て「もう大丈夫なの?」と言ってきた。

私は無言で頷いたのだが…

目の中のメイドは


ウサインボルト氏のあのポーズ(弓を引くポーズ)をしていた!!

その指の向く先は 伊藤里美!


(ホント何なのこいつ!!!!???)


と夜風は白目をむきかけるのだった…

そして何やらそのメイドはこちらに向いてウインクまでしてきた!妙に達成感のある笑顔と共に!!


(多分何かさせたいってのは馬鹿な私にもわかる!!だが私は!!)


「ぜっったいコイツの意思は断固拒否します!」


と言いはなった!(授業中に)

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