既に老境を迎えた大富豪の未亡人の語る世にも奇怪で恐ろしい話。 昭和の風情が残る大きな洋館に、亡夫の遺産で余生を送る彼女が伝を使ってまで呼び寄せたルポライターに語った 亡き夫 との五年間は、幸福と不穏がない混ぜになったものだった。 優しくて遣り手で頼り甲斐のある夫の、ふとした時に垣間見る不可解な行動には人智を超えた存在との契約があった。 St. John Doe蝋燭に象徴されるもの。生命、時間、そして幽かな灯火が、暗闇の中に茫然と光る。ゴシック・ホラーの粋。