第16話 クリスマスデートと年下男子
カフェでの支払いを終えると、カフェの裏側の通りに向かう。
「ここでいいのかな?」
支払っている途中で、高瀬に小さな声で裏口の方で待ってて欲しいと言われた。
(なんか秘密っていいな)
つい口元が緩んでしまう。
たくさんのカップルが街を歩いている。
クリスマスが近づくとよりカップルが増えているように感じるのはなぜなんだろう。
カップルが羨ましくて見てしまうからだろうか。
でも今日の私は違う、
まだ佐久間とのデートの返事はしていない。
答えを考えている内に、「どうするかはまた決まったら教えてくれ。もう休憩時間なくなるから、メシ食うぞ」と言われてしまって、話す暇がなかったのだ。
デートに行くのか、行かないのか・・・
自分の中では結論は出ていない。
「お待たせ」
カチッとした服装が雰囲気によく合っていて、カッコよさが増している。
「じゃあ、行こっか」
高瀬と並んで歩く。
ゆっくりと歩いてくれていて、舞の歩く速度に合わせてくれているのがわかる。
「今日は寒いね」
そう言いながら、ふとお店のショーウィンドウに映る高瀬と自分が写っている。
(他の人にはカップルに見えるのかな)
兄弟にも見えるかもしれないが、顔は似てない。
舞が考え込んでいると、高瀬が心配そうな顔でこちらを見ている。
「どうした?」
「ううん、何でもない!」
誤魔化すように、「そんなことより、今日はどうしたの?」と高瀬に聞いた。
「えっと…」
高瀬はそのまま口をつぐんだ。
深刻なことかと思っていたら、「そういえば」と何かを思い出したように話し始めた。
「あの、前に料理が苦手って言ってましたよね?」
そう言えば料理が苦手だと話したかもしれない。
どうしてそんなこと言っちゃったんだと過去の自分にツッコみつつ、「そうだったかな」と曖昧に返事をする。
「で、あの・・・俺は料理作るの好きで・・・例えばラザニアとか唐揚げとか・・あと最近はケーキ作りもハマってて」
「すごい!そんなに色んな種類作れるんだ」
「うん・・実家では料理担当だったから」
「ラザニアとか食べてみたいな」
「・・・じゃあ食べてみる?」
「え?いいの?」
舞が目を輝かせると、高瀬は恥ずかしそうに目を逸らして頷いた。
「クリスマス・・・どうかな?」
「ク、クリスマス!?」
「え?ダメだった?」
「ダメとかじゃないよ!」
高瀬は「予定あったら、全然いいんだけど・・・」そう言いながらも、瞳の奥が悲しそうだ。
「予定があるとかじゃないんだけど・・・」
佐久間の顔が頭によぎる。
「じゃあ、また返事待ってる」
「うん、わかった」
高瀬はニコッと笑うと、その後はカフェであったことや舞の会社で会ったことなどを話しながらアパートまで帰った。
「じゃあ、また」
「うん、じゃあまた」
お互いそう言って扉を閉める。
「まさか本当に誘われるなんて・・・」
佐久間からも高瀬からもクリスマスデートに誘われるとは・・・
思いもよらない展開に、舞はその場でへなへなと座り込んだ。
「えー!そんなことなってんの!?」
舞は自分自身で決めなければと思ったが、今日の出来事がずっとぐるぐる頭の中で回るだけで答えがでないので、
真由子はかなり驚いたようだが、一通り話を聞くと、「どっちが好きなの?」とズバッと核心をついてきた。
「それがわかんないから困ってる」
「わかんないって、舞自身が決めなきゃいけない問題なのよ?」
「だって、最後の恋愛からかなり経ってもはや好きって感情がどういう状態かがわかんないよ」
「まぁその高瀬くんはいい子だと思うし、付き合うには問題ないかもしれないけど、舞は将来結婚とかしたいんでしょ?」
「まぁ出来れば」
「じゃあ、高瀬くんは難しいんじゃない?」
最初は「私は決める権利ないから聞くだけよ」と言ってたのに、真由子はハッキリと言った。
「年齢のこともあるけど、将来模索中って感じなんでしょ?彼が将来を決めた時には、もう舞はおばさんだよ?その時になってフラれたら目も当てられないよ」
舞が30代後半になった時、高瀬は30歳。男であればこっからという年齢だろう。
こちらはそこでフラれたりしたら、確かにそこから出会って結婚となるとしんどい。
「確かにそうなんだけどさ」
「その点、佐久間はうちの会社で営業成績よくて将来有望、そして性格もいい。安定を求めるなら佐久間だと思うな」
真由子の言う通りだ。
佐久間の方が将来はよっぽど安心だ。
幸せにしてくれる気もする。
でも、なぜだか決めきれないし、心の中がモヤモヤしてくる。
「まぁ、でも最後は舞が決めることだから。私はどちらを選んでも応援するよ」
「うん・・・もう少し考える」
真由子と話したことで、ほんの少し気持ちが整理できた気がする。
「
部屋の片隅に飾られた真由子と日葵と3人の写真に目をやる。
3人ともすごく嬉しそうだ。
よく見ると端の方に佐久間がピースしてこっそり写っている。
「どうして決められないかな・・・」
舞はため息をついて、ごろんとベッドに横たわった。
すると、部屋のチャイムが鳴った。
時計を見ると、20時を指している。
「こんな時間に誰だろ?」
舞は最低限の身なりを整えると「はーい」と扉を開いた。
「・・・嘘」
「久しぶり、舞」
そこには少し日に焼けた日葵が立っていた。
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