28日目 沈黙の在庫 〜狂った線と制度の罅〜
在庫/二十八日目・朝
・水:0L(未補充)
・食:海藻 微量(束×0.05以下)
・塩:痕跡程度
・火:なし
・記録具:ペン 使用可(インク残量減少)
・体調:脱力。視界に黒斑。耳鳴り。
・所感:制度は応答せず。数字を書こうとしても、線が拒む。
朝。
ペンを握った瞬間、帳が白紙のまま沈黙した。
「0」と書こうとすれば線が掠れて消えた。
「微量」と書けば文字が滲んで崩れる。
昨日までは数字があった。
今日、帳は記録そのものを拒絶している。
これは狂気か、それとも制度の断絶か。
観測/午前
・祠:亀裂は砂で塞がれ影も消失
・鳥:不在。羽音も痕跡もなし
・潮の人:姿を見せず
・影:杭の影、輪郭を失い砂に溶ける
・星図:座標の光が「空白」へ移動。記号に置き換わらず
観測不能
・記そうとしても語がな
・も=も消えた
・「未払い」すら記せない
私はただ眺めるしかなかった。
午後。
耳鳴りが大きくなり遠くから呼ぶ声に似て聞こえる。
帳に書こうとしても文字は「………」と並ぶだけ。
制度はもう意味を拒否している。
かろうじて残るのは手の震えと線を引きたい衝動だけ。
数字ではなく模様のような線。
まるで星図の欠片を写そうとするかのように。
条項補注(二十八日目・午後)
・制度は沈黙。記録が失われつつある
・観測も不能。対象は姿を消し残るは空白
・「線を引く行為」そのものが最後の制度
夜。
帳を開いた。
書き残すべき数字はない。
だが白紙に向かうと手が勝手に「〇」「=」を繰り返していた。
それは記録か。模倣か。狂気か。
誰にも判じられない。
在庫/二十八日目・夜
・水:0L
・食:海藻 痕跡
・塩:痕跡
・記録具:ペン 使用可(残量わずか)
・所感:制度は声を失った。残るのは、線を引く衝動だけ。
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