いきなり許嫁候補!? ~分家序列最下位からの成り上がり?!私、望んでませんから!ほっといてくださいよ!~

天野建

第1話 私、前世は異世界だった

「ぐはっ」

 熱い。見下ろすと胸が自身の血で染まっている。

 これは回復魔法をかけても間に合わない。

 兄上が呼び戻してくれると言っていたのに。

 これまで生きてきた自身の人生が、一瞬にして去来する。

 子爵家三男であることを理由に、家の事など考えず、好き勝手生きてきた。

 あきれられても、自身の好奇心のままに。

 結果。戦地に送り込まれて。

 何もなせないまま死に行く。できたことは人殺しか。

 周りには友も、兄弟も、いない。

 1人だ。

 最後に頭にあったのは、自分自身への失望だった。

 絶望の中、意識を手放す。

 願わくば、来世ではこの世に生きた証を残せるよう。


 うう。

 私は猛烈な息苦しさ、強烈な圧迫感を覚えていた。

 なんだ? どうなっている?

 私は戦場で致命傷を受けた。

 助かる見込みはない。

 死を待っていた。

 痛みも消え、すべての感覚も失せた。

 そして意識さえも失った筈である。

 なのに、なぜ?

 なぜ、こんなにも苦しい?

 再びの苦しみが私を襲う。

 神は死に行く者に、今以上の苦しみを与えようというのか?

 やめてほしい。どうか安らかに逝かせてほしい。

 ああ、なのに、無常にも更なる苦しみが!

 神よ!どうか慈悲を!そう嘆願してるのに!

 更に、更に、苦しくなる!?

 安らかな死をと、ひたすら願っていた私の願いむなしく、一向に収まる気配がない!

 ブチッ!

 いい加減にしろ!

 怒髪天を突く!

 全身に怒りが充満する!パンパンである!

 と、刹那。


 するりん、ぽん!


 という音がしたがどうかは不明だが、圧迫感がいきなり消えた。

「ぎゃお!!」

 びっくりした! なんだ? どうした? どうなっている?

 目の前はぼんやりしていて、よく見えない。

 見えないのであるが、これは!?

 私、生まれ変わったのであるか!?

 先ほどまでの苦しさは、産道を抜ける為のものだったのであるか!?

 いやいや、早すぎるのである!!

 私が死んだのはついさっきのことである!

 神よ!少しは大いなる天上で、休ませて欲しい!

「おぎゃああああああ!!!」

 私は盛大に抗議の声を上げた!


 はい。私がこの世に生を受け、早5年。

 ここに至るまで、紆余曲折ありました。

 それは人が成長する過程で、誰でもそうであろうと、突っ込みを入れる方々もいらっしゃるだろう。

 もっともである。

 だが、それでも私は訴えたいのである。

 私はここに産まれ出づる際、神の采配かあるいは手違いなのか、前世の記憶を持ったままに、新たな人生に踏み出すことになったのである。

 その記憶から、死してすぐに転生した!とわかった時、私に休息はないのか!と憤りを感じたのは、まだ記憶に新しい。

 とはいえ、それも過去の事である。

 私は赤子でありながら、大人の記憶があるならば、先んじることも可能か?と、すぐに頭を切り替えたのだ。

 魂の休息をと今更訴えても、もうどうしようもない。

 生まれてしまったからには、生きねばならないのである。

 ならば、この前世の記憶を最大限有効に使おうではないかと、私は奮い立った。

 身体は新品、思考は先行。

 ならば、前世での教訓を生かして、今世では人よりよい人生を送るのだ!

 前世の私は好奇心ばかりが先に立ち、色々なものに手をつけたあげく、何事も成し遂げることができなかったのである。

 ならば、小さくてもいい。1つでもやりとげたと感じて最後を迎えたい。

 私は握りこぶしを天に突き上げる。

 まだ幼児だというのに、死の記憶が濃いからか、その気持ちが強い。

 覚えているとも!

 死の間際、私はそれを強く後悔したのだ。

 私は何も残せずに、死んだ。

 前世の私は知識欲はあれど、向上心が低めで、競争心も皆無だったので、期待外れの怠け者と、父にはそう思われていた。

 せめてお国の為になれと、父に強制的に軍に入れられ、死んだようである。

 悲しきことである。

 父の気持ちもわかる。

 貴族の親にしてみれば、家に何の益ももたらさない穀潰しが、更に自身の興味あることに、家の金を使い込んでいたのだから、我慢が出来なかったのだろう。

 家のメンツもあっただろう。そこは申し訳なかったと反省しきりである。

 もう少し体裁を考えて行動すればよかったと思う。

 まったく、前世の私は貴族の三男坊で、家督を次ぐでもなく、また次男というスペアでもないので、将来は長兄様のお慈悲にすがり続けようと思っていたのだ。

 長兄様は私をとてもかわいがってくれていたから、それもありかと、のんびり構えていたのだ。

 そんな甘い考えは父に蹴っ飛ばされて、軍へと飛ばされた。

 形だけでもやる気を見せればよかったのかもしれないが、なにに対しても本気を出さない私に業を煮やしたのだろう。

 軍は超厳しかったのである。さすがの私も必死になった。

 なぜか。

 答えは1つ。

 死にたくなかったからである!

 頭をフル稼働して、難局を乗り越え、なんとか死なずに隊長クラスに昇進した私、これで死ぬ確率が下がったかと、気を緩めたところで、死んでしまった。

 どうにも最後で、詰めの甘さが露呈してのである。

 残念。

 どうも戦地でも、隠れのんびりな性格が抜けきれなかったようである。

 のんびりとは違う?それは怠慢であると?

 見解は人それぞれである。

 反論は認めよう。

 人の意見は尊重する。

 ざっと私の前世をざっと説明してきた。

 こんな人生を歩んできた私。

 自身の前世の心残りを成し遂げる機会を得たとポジティブに考えることにし、この幸運を生かし、何かをなすことを目標としたい。

 とはいえ、とはいえである。

 それはあくまでも人生の最終目的である。

 せっかく生まれ変わったのだ、何かをなすにしても、まずは人生を楽しまなくては面白くないであろう。

 何をなすか。それを決める為には色々と知らなくてはならないのである!

 これについては、反論は認めない!

 お!恐れ知らずなそこの君、なんだ?

 それでは前世と同じではないのか?

 ふっ、鋭いご指摘、感謝する。

 だが、敢えて言おう。大事だから何度でも言おう!

 この世に生まれたからには、何か残そうって言う最後の思いは忘れてはいない。

 ただ正直なところ、この世界で過ごすうちに、何かを成そう!という決意は次第に遠のいているのも、また実情。

 徐々に徐々に、遙か遠き果てまで。

 人間とは、そう簡単には変わらないものなのである。

 それでも。前世での失敗は生かそうと言う思いは、忘れてはいないのである。

 父に母に、周りに呆れられないくらいは、精進しようとは思うのある。

 そう。前世では生まれが貴族だったせいで、必要以上の生活はできてたから、ある程度好き勝手してても問題なかった。

 軍隊に放りこまれるまではである。

 軍に入った後、厳しさはひとしおであった。

 まずはその教訓から生かす。

 若いうちに精進し、文句言われないくらいには自分を高めるのである。

 今世での目標は、向上心をある程度持ちつつ、自身の好奇心を満たし、何かをやり遂げ、最後は笑って逝けるようにする、これである。

 なかなかの目標である。

 え、甘さがにじみ出ている目標?

 その指摘も甘んじて受けよう!

 見ていてくれ給え!


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