【掌編08】ハックルベリー・フィンの新冒険(少年小説)
僕は日本に旅行に来た。
アメリカからの船旅で一ヶ月、そろそろ陸が恋しくなってきた頃だ。
僕は子どものときに、ひょんなことから財宝を発見したんだ。大人たちは僕が大きくなるまでは自由に使っちゃダメだ、そう言って弁護士にお金の管理を任せちゃった。そういうわけで、成人になるまでは僕のもののはずなのに、まったくお金を使えなかった。それが嫌だったから、何度か脱走して、イカダに乗って小さな旅をしたんだけどね。でも、大人たちは僕を探し出してきて、捕まえて学校に放り込んだ。大人たちはそこで僕にピッタリの先生を連れてきたんだ。この先生も僕のボロボロの服を見ながら、新しいひらめきができそうって笑ってたよ。トマス・アルバート・エジソン博士。本当に変な先生だよね。
「好きに生きる、大いに結構。でも学んでからでも遅くないだろ」
僕はシラミだらけの頭をかきながら、もう少しだけ我慢してみようと思ったよ。それで、学校にいきながら、お金の使い道を一生懸命考えた。もちろん、弁護士はきっちりとお金の管理をした。食べる食事や勉強には一切困らなかった。だから、勉強をしながら思ったんだ。世界は広い。せっかくお金があるんなら、色々な世界を見てみたい。僕は先生にこのことを伝えたんだ。そうすると先生はにっこり笑って、弁護士にいろんな言葉を学ぶためのお金を使うよう話をしてくれたんだ。
でもね、そこからは大変だった。いろんな言葉を叩き込まれた。特訓はラテン語からスタートした。いやいや、そんな古びた言葉を勉強しても……僕は文句を言ったんだけど、先生はこう言った。
「この昔の言葉を覚えれば、ヨーロッパのほとんどの言葉はわかる」
確かにそうだった。それから僕はフランス語、ドイツ語、イタリア語をあっさりと学べた。でも僕が一番心ひかれたのが日本という国だった。先生は若い頃に電球の光る部分、フィラメントって言ってたかな? それを日本の竹で作ったんだ。その時、僕は電撃が走ったよ。これだってね。だから、先生に日本語の先生をつけてほしいってお願いしたんだ。もう必死だったよ。先生は白髪頭を僕に向けて、にっこりと笑った。そして、日本人の友達をわざわざ連れてきたんだ。
「ひらめきは大事だぞ、少年。ぜひ勉強したまえ!」
そして、必死で日本語を勉強したのさ。勉強はとっても大変だった。でもね、野口英世ってお医者さんもびっくりしてた。
「君は二番目に努力家だ。一番はもちろんわたしだけどね」
そうウィンクしながら、不自由な片手を見せてくれた。だから、大人になったら時に最初に行く国は決めていたんだ。
そう日本。
さぁ、タラップが降りた。日本の子どもたちが手を振って出迎えてくれた。
僕、ハックルベリー・フィンの新しい冒険の始まりだ。僕のことはハックって呼んでね。
【設定】
物語は大正元年1917年。
主人公 ハックルベリー・フィン18歳 原作では架空の街、時期が明記されてないため読者が馴染みやすい年齢に。
自由奔放な冒険家。差別を嫌いどんな人にも平等に接することが出来る勇気と行動力がある。成長。物語のエンジン。神戸港に到着。
指導者 老シャーロック・ホームズ58歳隠居した世界最高の探偵。論理と知恵。ドロシーの愛犬といつも一緒に居眠りしている。養蜂家。銭形平次がルパンと判明後に正式に日本政府から依頼を受ける。オオスズメバチを求めて日本に到着。
神秘の案内人 小泉八雲(故人)日本愛が生んだ「旅する妖怪」。死んでも日本が好きすぎて成仏できない。文化とファンタジー。物語の魂。
ロマンのヒロイン アン・シャーリー25歳新婚旅行中の聡明な女性。夫の医者ギルバートとともに新婚旅行で日本を訪ねる。感性と文学。物語の良心。
若きライバル 明智小五郎16歳鋭い正義感を持つ探偵の卵。銭形平次の弟子として登場。彼の変装術はルパン直伝。対立と努力。
もう一人の主人公 ドロシー(オズの魔法使い)17歳留学中の現実主義者の高校生。おじさんたちが亡くなった後は農場を手放し、自分の体験したオズの世界に旅に出た。老犬トトを連れている。靴を三回鳴らす癖あり。信じられない幸運の持ち主。元気と実践力。物語のスピード感。
敵 ルパン二世42歳 当初、銭形平次に変装。日本の至宝を狙う華麗な大怪盗。華麗さとトリック。物語の障害。
神戸港にホームズ、ドロシーが乗ってきた。同時期にアンシャーリーも夫と共に来日。当初、日本政府は老探偵銭形平次に依頼したが、実はそれはルパン二世の変装。銭形平次は何年も前に死去していた。そこで草薙剣盗難計画を何年前から仕込み、明智少年に出会う。熱田神社にある草薙剣の剣をめぐる。
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