Thread 04|在宅ログイン、継続中

自宅に戻った谷口は、すぐにノートPCの電源を入れた。


タイムスタンプを確認すると、自分が出社していた時間も“在宅勤務”としてログインされ続けていた。

Slackのステータスも「アクティブ緑」のままだ。もちろん、自分は操作していない。


──あいつが、ログインしている?


慌ててプロフィール設定に飛ぶと、アイコン画像がわずかに変わっていた。

背景が、真っ白から“薄灰色”に変わっている。

気にしなければ気づかない程度だが、明らかに別のものだった。


「この色って──」


それは、さっき見た、あの13階の無人オフィスの壁の色と同じだった。


偶然には思えず、気持ちが悪くなった。

すぐにログアウトしようとしたが、

『セッション中のため操作できません』という通知が返ってくる。

管理者アカウントを使って強制終了しようとしても、『管理権限がありません』と跳ね返された。


──俺、自分のアカウントの管理者じゃなくなってる?


谷口は管理者が誰か確認しようとした。

管理パネルに表示された名前は、見覚えのない“漢字一文字”。


ただ、そのアカウントには、確かに“谷口”の個人メールが紐づいていた。


「これ、乗っ取られてるってレベルじゃねぇ…」


パニック寸前だったが、そのとき、Slackに通知が来た。


「出社されてて助かりました、谷口さん」


送信者は、社内の若手・三村だった。


出社──?

谷口は思わず返信した。

「なんで俺が出社したこと知ってんの?」


しかし返ってきた返事に、手が震えた。

「え? だってさっき、給湯室で会ったじゃないですか」

「“いつも通りの時間”には出社されてましたよね?」


俺は三村とは会ってない。


っていうか、”いつも通りの時間”って…なんだ──?

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