第10話 オタク、提案する



 大変な目に遭った。

 クルスさんの代わりに、エイジャさんとリーシャさんに攻められっぱなしだった。


 隣の部屋からも凄い悲鳴が聞こえてたから、この宿はこういう宿なんだろうな。

 ここも隣も、凄い声だったよ。みんな激しすぎる。


「その……どうだった、オタクくん? ボクたちとの夜……」


「えっと。素晴らしかった……んですけど。どうも、普通と違う気がして」


 クルスさんが恐る恐る訪ねてくるけど。

 そんな甘い感じではなかったよね。エイジャさんもリーシャさんも強すぎるので。


「ボクら前衛職だからさ。どうも、討伐の後は血が騒いじゃって。みんな、鎮めるのに苦労するんだよね。……オタクくんが増えてくれて、良かったよ」


 生け贄が増えてくれて良かったよ、としか聞こえない。

 普通ならハーレムなんだろうけど、エイジャさんもリーシャさんも全力で攻めッ気オンリーだからなぁ。


 いわゆるタチと言う奴で、ハーレム主に見えたクルスさんがまさかのネコで受け。

 どうなってるんだろ、このパーティ。


「こんな仲だけど……嫌いにならないでね?」


 くっ、クルスさんが可憐すぎる!

 顔はイケメンなのに! その仕草はズルいと思います、クルスさん。

 完全に乙女だよ、この人。


 秘密を知って嫌わないものだから、全力で甘えてきてる感がある。


「とりあえず、エイジャさんとリーシャさんを起こして、荷物をまとめましょうか。……予算はあるし、これからはもっと良い宿に泊まりましょう」


「そうだね。今まで、ポーションや治療院のお布施で手持ちが吹っ飛んでたからね……初めて手持ちが残った気分になるよ」


 苦労してるんだな、クルスさん。

 お金の管理はクルスさんがしていたらしく、よほどカツカツだったらしい。

 だろうね、二人とも押せ押せの豪快美女二人だからね。


 そりゃ、お金が残る気はしないなぁ。


 肝心のエイジャさんとリーシャさんは、素っ裸で二人で抱き合って同じベッドで寝ている。

 おっぱいはおろか、下半身も全部丸見えだ。

 昨日まで童貞だったぼくには刺激が強い。


 ごろんと寝返りを打って全裸で大の字になるエイジャさんたちに、しょうがなく二人の肩に触れて目を覚まさせる。


「起きてください、二人とも。朝ですよ」


「んー……美女……」


 寝ぼけてる。美女と何かしてる夢を見てるな、これは。

 昨日あれだけ散々したのに。


「おはよー……オタクくん……」


「おっはー……」


 何とか二人とも起きてくれた。

 素っ裸のままもそもそと下着や服を着込み始める。


「クルスさん。このままギルドで今日の仕事を探すのも良いんですけど、方針を決めませんか?」


「方針? このパーティの?」


 そう。

 現状、このパーティはかなり危ない。

 と言うのも、三人の抱える秘密が原因だ。


 この異世界だと、回復魔法を牛耳る宗教組織があるんだけど。

 その教会が、前世の一神教さながらに、同性愛を禁忌としている。


 理由は単純、生産性がないからだ。

 このファンタジー異世界では、多様性なんて概念は許容されない。


「教会に目をつけられると、結構面倒だと思うんですよ。……なので、味方を増やしませんか」


「どうやって増やすんだい?」


 教会は権力を持っているけど、それでも高位冒険者相手に暴力で弾圧できるほどの根性があるわけではない。

 なので、一つは単純にランクを上げて自衛力を身につけること。


「――もう一つの手段は、『人助け』をたくさんして、ギルド内や冒険者内で、ぼくらの地位を上げることです。ぼくらに助けられた人が多ければ、ぼくらが弾圧されて窮地になったとき、助けてもらえそうな気がしませんか?」


「ああ、それはそうだね。……今までは、他人との関わりを避けていたけど。むしろ、他人と関わった方が良いのか。オタクくんの強化があれば、それもできるね」


 納得してもらえた。

 同性愛以外にも、クルスさんの体質もある。

 両性具有への誤解を上回るくらいにぼくらのパーティの評判が良ければ、弾圧されないだけの地位が作れるかも知れない。


「うん。良いね、じゃあ護衛なんかを増やそう」


「他にも、討伐の時なんかに、危機に陥ってるパーティがあったら積極的に救出しましょう。他人の獲物を狙うことで揉めるかも知れませんけど、獲物を譲れば問題ないと思います」


 ぼくら冒険者には、ゲームと違って『経験値』なんてシステムはないのだ。

 目当ては、お金になる素材だけ。討伐の報奨金も辞退すれば、文句は出てこないと思う。


「てことだよ。聞いてた、エイジャ、リーシャ?」


「ふぁい……」


 寝ぼけてる。こりゃ無理だ。

 というわけで二人が目を覚ましてから、改めて今の説明をした。


 できることなら、大手を振ってエイジャさんとリーシャさんがイチャつけるくらいまでに人望ができれば良いんだけど。


 じゃないと、三人の人生がきゅうくつすぎるよ。


「クルスさんたちにとっては、余計なお世話かも知れませんけど……」


「そんなことないよ。さっき、オタクくんは言ってくれたよね。『ぼくらが弾圧されたとき』って。ボクらと一緒の立場で考えてくれてるんだ。嬉しいと思っても、余計なお世話だなんて思わないよ」


 クルスさんはやっぱり良い人だなぁ。

 爽やかさと優しさにあふれたイケメン過ぎる。

 こんなにイケメンなのに、夜はどうしてあんなに乙女なんだろう。


「んー、んじゃ危険区域の討伐や探索を増やすって感じ?」


「に、なるよねー? 未帰還の新人冒険者とかの捜索もするんっしょ?」


 二人も理解してくれたらしい。

 そういう救助要件は、ギルド側も求めてることだ。

 レイノルド爺さんにも助けてもらってるんだから、恩を返せるなら返したい。


「とりあえず、ギルドの力になれることは全部やってみましょう。何かダメなことがあったら、レイノルド爺さん辺りが忠告してくれるはずです」


「うん、そうだね。やらないよりはずっと良いよ。オタクくん、ありがとう!」


 クルスさんも嬉しそうだ。

 エイジャさんとリーシャさんも、ちょいーっすと横ピースサインで了承してくれた。


「じゃあ、ギルドに行きますか。ほら、エイジャさん、リーシャさん。しっかりして」


「あたた。腰が……」


「やりすぎたよねーっ」


 腰を押さえながら立ち上がる二人。

 一応、装備は身につけられたので動くことはできそうだ。


 クエストは受けられるかな?



 この二人、本当に後先考えないな……


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