空色デイズ 〜学園一の貴族令嬢とデートしたいだけなのに、学園の命運まで背負わされる俺(兵士候補生)の異能学園奮闘記〜
平木明日香
星暦と世界史概説 ― 星の流れと人類文明の変遷 ―
星暦と世界史概説 ― 星の流れと人類文明の変遷 ―
■ 1. 暦体系の成立
本世界における標準暦は、星暦(Stellar Era, SE)と呼称される。
その起点であるSE 0年は、古代文明セレスティアの崩壊後、各地の王国・都市国家が再建を開始した時代に設定されている。これは単なる年代記録の便宜上の起点ではなく、「人類が一度、文明を失い、再び星と共に歩み始めた歴史的断絶点」としての意味を持つ。
星暦以前の時代を「古代期(Ancient Era, AE)」と総称するが、その記録は断片的な碑文、遺跡、ならびにマナ結晶に刻まれた情報波形に限られるため、統一的な歴史像を描くことは困難である。現在の学術界においても、AE文明は「高度なマナ情報工学を有していた」と推定されるが、なぜ崩壊したのかについては依然として未解明である。
■ 2. 世界年表(星暦)
以下に、主要な歴史的転換点を年表形式で整理する。
◼︎SE 0年 ― 古代文明の崩壊と部族化
古代セレスティア文明が突如として崩壊。詳細な原因は不明であるが、考古学的にはマナ流の大規模逆流現象(いわゆる「星核災害」)が有力視されている。結果として、大陸全土に存在した都市群は壊滅し、生存者は散発的な集落を形成。以後数世紀にわたり、人類は部族社会へと退行する。
◼︎SE 400年 ― 王国時代の勃興
再統一の動きが始まり、各地で小国家・都市国家が成立。
この時期に「マナ結晶」が再発見され、簡易的な道具や灯火として利用され始める。マナを燃料ではなく「資源」として扱う萌芽期であり、この技術が後世の大規模文明復興の基盤となった。
◼︎SE 1200年 ― アルカナ工業連合の成立
西方ヴァルハラン大陸にて、都市国家群が技術連合を形成し、「アルカナ工業連合」を名乗る。
この時期にマナの精製・輸送技術が確立され、動力炉や輸送機関に応用されることで、急速に文明が復興・発展する。蒸気や石炭に依存していた地域国家との差は瞬く間に拡大し、ヴァルハランは技術優位によって周辺を従属させていく。
◼︎SE 1500年 ― ヘリオス帝国の誕生
アルカナ工業連合は軍産複合体としての性格を強め、ついに《ヘリオス帝国》へと体制を改める。
その拡張政策は苛烈で、周辺諸国を次々と併合し、数十年のうちに一大国家群へと成長した。この時期に始動したのが、後に悪名を轟かせる「アストラ計画」の原初形である「強化兵計画」である。ここでは、マナを直接人体へ注入する試みが開始され、初期の「魔素適合兵」が誕生した。
◼︎SE 1700年 ― エルディア連邦の成立
帝国の拡張に危機感を覚えた西方諸国は軍事同盟を結び、《エルディア連邦》を成立させる。
この時点で世界は明確に「帝国 vs 連邦」の二大陣営へと分断される。
この時代は「双極秩序の成立」と呼ばれ、冷戦構造の萌芽期である。
◼︎SE 1800年 ― セレスティア大陸の抵抗
東方の《セレスティア大陸》において、帝国の侵攻は自然文明と古代遺産による強力な抵抗に遭遇し、撃退される。以後、セレスティアは「古代遺産の守護者」として中立を貫き、帝国・連邦の双方に対して距離を置く。この出来事は、古代文明の遺産が依然として現役であることを世界に示した。
◼︎SE 1900年 ― ノルド大陸征服
帝国が北方「ノルド大陸」を征服し属州化。これにより、帝国は大量のマナ資源を独占し、その軍事力をさらに増大させる。連邦はこの独占に対抗できず、冷戦状態が固定化していく。
◼︎SE 1980年 ― アストラ兵計画の本格始動
長らく試行錯誤を重ねてきたアストラ計画が、この時代に本格的に実用段階へ移行する。
人造兵士――すなわち「アストラ兵」が実際の戦場へ投入され、魔獣討伐や戦線維持の要として軍事の主力を担うようになる。主人公である「カイ」もまた、この計画から生まれた第七世代素体である。
◼︎SE 2000年 ― 現代
ガイア大陸において「マナの源泉」が発見されたとの噂が広がる。
この情報は帝国・連邦・セレスティアの三大勢力を再び緊張へと導き、やがて水面下での熾烈な争奪戦が始まる。
■ 3. 歴史の特徴と学術的考察
1. 文明の断絶と復興
星暦史は、古代文明崩壊を契機とする「断絶」から始まっている。
この断絶は、地球史における「氷河期後の再定住」に類似し、全人類が「星のマナ流」との再接続を余儀なくされた過程といえる。
2. マナの二重性
マナは単なる燃料ではなく、「エネルギー+情報」の二重性を持つ。ゆえに、帝国はそれを兵器化し、連邦は制度化し、セレスティアは神学化した。歴史は常に「マナをどう扱うか」という思想の衝突であった。
3. アストラ計画の位置づけ
アストラ計画は、星暦二千年の歴史において「人類が自ら進化を設計する」という未曾有の試みである。
これは単なる軍事政策を超え、文明そのものの進化論的方向性を規定するものである。
■ まとめ
星暦史は、大きく三つの段階に区分できる。
・崩壊と再建(SE 0~400)
・技術復興と帝国の成立(SE 1200~1700)
・双極秩序と人造進化の時代(SE 1700~2000)
現在我々が目にする時代は、その最終段階――すなわち「人類がマナとともに自己改造を始めた時代」であり、その先にはさらなる「進化」か、あるいは再びの「崩壊」が待ち受けている。
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