エイドス

楓葉蓮

旅立ち

第1話 旅立ちの日

この世界では大気に満ちる魔力を使って奇蹟を起こす者を魔術師と呼ぶ。魔術師は15歳になると人間を知り、自分を知り、魔術を学ぶための旅に出る。そして様々な国や街を周り、自分だけの魔術つまり魔法を確立した者を尊敬を込めて魔法使いと呼ぶ。

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今日は遂に待ちに待った日。僕、魔術師見習いゲハイン•ミスヴォルトの15歳の誕生日。この日のために読み書きや計算に魔術の鍛錬を続けてきた。

「ハイミー準備はできてるの?」

「もう少しでできる」

階下から呼びかける母さんにそう返してから鏡の前に立ち、黒いマントと青に金色のアクセントの入った帯の付いた三角の帽子を被った。典型的な魔術師の格好だ。

襟を整え、皮で出来たキャメル色の真新しい鞄を持って部屋を出た。


玄関では父さんと母さんと弟が待っていた。

「本当に15になったんだなぁ…」

「ついこの前まで、外で走り回っていたのに」

父と母は感慨に耽っているようだ。

「おにいちゃん、どこいくの?」

僕の格好を見て、不思議そうに言った

「色んなところへ行くんだよ。山や海や川の側の国や街。花が綺麗な町や美味しい屋台のある街にも」

弟はあまり納得できていないようだった。

「最初はどこへ行くんだ?」

「まずは海を見てみたいので南へ向かおうと思います」

「そうか、ここらには海はないからな」


「朝昼晩三食しっかり食べるのよ」

「うん」

「私がいないからって日が上り切るまで寝てちゃダメよ」

「わかってる」

「洗濯は毎日するのよ。顔も毎日洗いなさいよ。それからお金は無くなる前に—」

「稼がなきゃでしょ。もう何回も聞いたから覚えたよ」

最近母さんはずっとこればかり言っているから自然と覚えてしまった。

「身体には気をつけるんだぞ」

「はい父さん」

一度、家族全員の顔を見た。皆浮かべている表情は違った。

「それでは行ってきます」


家族への挨拶を済ませ、僕は家を出て箒に跨り、箒に魔力を込めて飛び立った。振り返ると、朝日に照らされながら手を振っている家族と15年過ごした自分の家が小さく見えた。それを一瞥して、僕はこれからの旅に思いを馳せて飛んだ。

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