ひかりがひかる
宇宙遊泳
prologue|before twinkling
__きらきら星におねがいすると、なんでも、かなえてくれるんだ。
わたしが最後に聞いた兄の言葉だ。最後というのは、ほどなくして兄はこの世を去ったから。わたしが五歳の時だ。あれ、四歳だったかな。ちょっと、その辺の記憶は曖昧だけど、兄の言葉だけは、今でも忘れずに覚えている。やわらかいけど、語尾がすこしだけ掠れる声。その温度感とともに。兄の言葉を忘れてしまうと、兄のことまで忘れてしまいそうで怖い。だから、ときどき、こうやって声に出してつぶやいている。ちょっと、あやしいかも。でも、忘れてしまうよりも、ずっと、いい。
窓をあける。わたしは、しずかに目を閉じる。すぅーと、息をはく。自然に止まるのを待つ。そうして、ゆっくり、ゆっくり、息をすう。すすすと、肺のなかに活動的な空気の粒が流れ込む。とくん、とくん。からだのなかの音が響く。
大丈夫、わたしは生きている。
わたしだけのおまじないを呟く。あの頃から欠かしたことのないおまじない。そうして、今日も、わたしは勢いよくドアをあけるのだ。全思春期只中の、あの子たちと向き合うために。
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