第20話『中庭』


 ちょっと食べ過ぎちゃったプリム。


「けふ……」


 前の修道院だと、みんなで一緒に食事を摂るのだけど、上から順繰りに大皿から料理を取っていくものだから、一番最後のプリムの元にはほとんど回って来なかった。それが第二神殿ともなると、忙しいものだから全員が一緒にお昼を摂る事はなかなか出来なくて、食堂に行けば常に何らかがあるという。

 都会は人が多いから、神殿に食べ物をお供えに来る人が絶える事も無いというのも大きかった。その上、ナナナが新鮮な野菜や焼きたてのパン等を少し多めに買い入れて来たものだから、お昼の献立は潤沢だった。

 つまり、食べ放題。これが未体験ゾーン。


「けふ……」


 そんなこんなで遅い昼食の後、プリムは聖堂裏の中庭に来ていた。

 暖かな陽光が降り注ぐその一画は、ぐるり神殿の建物に囲まれ、中央には小さな噴水。それを囲う様に色鮮やかな花を称える植え込みが広がり、複数のベンチが置かれている。プリムは、その最も日当たりの良いベンチに座っているのだ。

 フードを外し、頭頂のお花畑に陽光をたっぷりと浴びせ、もうぬくぬく。


「ほええ~……」


 嗚呼、幸せ~。

 まったりとした時間。それがお昼休み。食休み。

 四肢を弛緩させ頬をだらしなく緩めつつ、ふと周囲の植え込みに目を泳がせる。

 嗚呼、この心地良さよ。

 ここは都会にぽっかり開いた、小さなヒーリングスポットかも。

 蝶や小鳥、そして妖精たちも楽し気に憩うのが判る。

 前に居た田舎の修道院では、何でも刈り込んじゃうから、こうはならなかった。石や地べたがむき出しで、乾いた風が吹き抜けていたけれど、ここは空気の流れも穏やかで、適度な湿り気があり、全体的に草木の息吹に満ちている感じがする。


「ここだけこんなに素敵だなんて、不思議……」


 少し離れた植え込みで、手入れをしているシスターの後ろ姿がある。

 そして、その周囲で楽しそうに遊ぶ妖精さんたちも。

 その人に妖精たちは見えていない様子だけど、きっと良い人なんだと思う。あのジュース売りのお兄さんも、妖精さんに好かれている素敵な人だったし。


 プリムに妖精が見えるのは、彼女が低レベルながらもフェアリーテイマーと呼ばれるクラスに属しているから。妖精と契約し、彼らの力を引き出す魔法使いの一種になるのだけれど、もっと小さな頃から口減らしの為に家を出されていたので、ほんの基本的な術しか学んでいなかった。それでも、人には見えない妖精の姿を見る事が出来るし、言葉を交わす事も出来るのでした。


『コンニチハ……』

『コンニチハ……』

『こんにちは。素敵なお天気ね』


 妖精たちの無邪気な声に、そっと返すと、返事があるなんて思わなかったみたいで、びっくりして飛んで行ってしまう。そして、少し遠巻きにしてこちらの様子を眺めているみたい。何人もで集まって、ひそひそと何かを話しているみたい。

 ちゃんと挨拶しておこうかな~と、プリムがそう思った時でした。


 中庭に別のシスターが数名、入って来たのです。


「あら、ごきげんよう。皆さん」

「ごきげんよう、シスターナナナ」


 ん?

 庭木の手入れをしていたシスターがそう迎え入れたら、プリムの聞き違いかナナナ先輩の名前が聞こえて来て……


「もう~、訳がわからなくて。困惑するしかありませんわ」

「私も」

「どうなさったの? 大分お疲れの様ね」


 う~ん。どう考えても、ナナナ先輩らしい言葉が聞こえて来ないのだけど、その声色は確かにナナナ先輩のもの。何かの寸劇でしょうか?

 中庭に入って来られたシスターたちは、明らかに何事かに困惑している様子だけど、プリムが困惑するのはその余所行きの丁寧な口調のナナナ先輩でした。


「そうだわ。ハーブティーなど如何かしら? そこのテーブルで」

「あら、いいですわね」

「うふふ。ちょっとしたお茶会ですわね」


……え~、そこの人、誰よ~!!?



<SMC-777(ナナナ)>

ルーンフォーク 雌型 製造年齢不明

冒険者技能

 マギテック ?

 シューター ?

 セージ ?

 フェンサー ?

 レンジャー ?

 ライダー ?

一般技能

 ハウスキーパー5

 ガーデナー5

 クレリック(シーン)5

 ハウスキーパーとガーデナーはキャラメイク時にダイスで決定。施設の管理維持要員として製造されたのかな~、なんてw

 クレリック技能を後で追加するのは、生まれ表で「神にあった事がある(と思っている)」から、その流れで追加。キャラクターシートは相変わらず行方不明だが、後は追放されたとか裏切られたとか、そんなものだったと記憶している。

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