1-7話 洗い物と雨:グレッグのささやかな逃避行
この頃のグレッグは、盛んに洗い物ばかりしていた。
それが、彼にとってのストレス解消だった。
三人で酒盛りをしているのだから、食器の量はかなりのものだった。
それでも苦にならず、むしろ楽しかった。
どうせ起きているなら、どう洗えば効率的かを考えている方が、心の闇に落ちずに済んだからだ。
それでも物足りず、食器棚の中の棚まで洗った。
祖父の形見のカップが入れ歯入れになっているのを見つけたとき、グレッグは言葉にならない感情を覚えた。
それは、冷たい雨が降る夜のことだった。
朝から紅茶すら飲ませてもらえない日々に業を煮やし、グレッグは実家を飛び出した。
もう怒鳴られても怖くない。
通報されても、事情を聞いてもらえるはずだ。
警官は親の言うことを盲目的に信じたりしない。
十歳になったグレッグは、ようやくそう居直れるようになった。
どこか休める場所を探して三十分以上歩いたが、店の一つも見つからなかった。
ようやく見つけた店でジュースを買い、入口で飲んでいると、「ここは飲食する場所ではない」と追い払われた。
グレッグは、ゴミ箱を蹴飛ばさずにはいられなかった。
さらにさまよい続け、沢を見つけたとき、グレッグは砂漠の中のオアシスという陳腐な表現では言い表せないほど感激した。
あまりの嬉しさに、そこにいた人たちに喜びを伝えると、彼らは戸惑った様子だった。
母の診ている看護師と再会したのは、その頃だった。
「姥捨て山で一人が亡くなって空きが出たので、今から来てください」と言われた。
グレッグは「姥捨て山」が何か知らなかったが、父が亡くなってから初めて感じた安堵感を邪魔されたくはなかった。
「後日ではだめですか?」と尋ねると、「今日しか空きの予約が取れません」と言われた。
結局、グレッグは一口も飲んでいない紅茶と食べかけのパンを抱えて、実家に戻った。
母を診ている看護師には会ったことがあったが、「姥捨て山」の職員に会うのは初めてだった。
姥捨て山とは、貴族が経営し、王室から支援を受けている――現代で言えば老人ホームのような施設だった。
看護師は言った。
「お父さんがグレッグさんには絶対に連絡をしないようにと強く主張していたので、連絡ができなかったのです」
「絶対に」と「強く」という副詞が並んでいた。
よほど強く言われたのだろうと、グレッグは思った。
両親に手紙を書いても返事が来ない歳月が続いていたため、両親が村の介護サービスを利用していたことすら知らなかった。
最近になってようやく家に上げてもらえるようになったが、最後に訪れたときは、まだ実家に馬車があり、母は平気で乗っていた。
それは、何年か前のことだった。
つづく
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