第2話# **番組台本案(続き)**


前のシーンからの続きとして、山本あづささんの「決意の言葉」を紹介し、専門家の解説につなげるパートを作成します。


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### **番組台本案(続き)**


**【シーン開始】**


**ロケーション:** 山本あづささんの実家・リビング

**登場人物:**

* 壬生(みぶ)えりか(ディレクター)

* 山本さんの父

* 山本さんの母


(VTR明け。母が涙を拭い、父がその肩を支えている。壬生ディレクターは、二人の気持ちが少し落ち着くのを待ってから、静かに切り出す。)


**壬生(D):** 「戴帽式で誓ったあの気持ちを、あづささんはずっと持ち続けていらっしゃったんですね。」


**父:** 「ええ…。本当に、まっすぐな子でしたから。一度決めたことは、決して曲げない芯の強さがありました。」


**壬生(D):** 「その強い意志は、彼女が残した言葉にもはっきりと記されています。」


(壬生(D)、テーブルに広げられたアルバムの横にある、数枚の資料に目を移す。それは、あづささんが病院に提出した研修レポートのコピー。)


**壬生(D):** (資料を一枚、そっと指で示す)

「これは、あづささんが正式に配属された後、看護師長との面談で提出したレポートです。」


(カメラが資料に寄る。手書きの文字が見える。)


**壬生(D)ナレーション:**

「『看護師になぜなったのか』『何をしたいのか』。新人看護師一人ひとりが、その原点を問われる面談。そこで、あづささんはこう記していました。」


(壬生(D)が、資料を一枚めくる。その瞬間、画面が切り替わる。)


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**<VTR START>**


**(SE:静かで、芯の強さを感じさせるピアノのBGM)**


**映像:**

あづささんの手書きレポートの文章が、ゆっくりと画面に映し出される。


**壬生(D)ナレーション(VTRに被せて):**

「わたし、山本あづさは、命の現場において、」


(ここで、あづささんの看護師として働く姿のスナップ写真がインサートされる。患者の車椅子を押す後ろ姿、同僚と笑顔で話す様子など。)


**壬生(D)ナレーション:**

「患者に寄り添う心のケアを目指し、看護師として職務を全うする決意です」


**テロップ(力強く、明朝体で):**

**患者に寄り添う心のケアを目指し**

**看護師として職務を全うする決意です**


**壬生(D)ナレーション:**

「そして、彼女はこう続けています。」


**テロップ(続けて表示):**

**看護師とは、医師を助ける存在でありたい**


**壬生(D)ナレーション:**

「そう、述べています。」


(映像、決意に満ちた表情のあづささんの写真で静止する。)


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**<VTR END>**


**【スタジオへ転換】**


**ロケーション:** 番組スタジオ

**登場人物:**

* メインキャスター

* 鈴木先生(医療ジャーナリスト・評論家)


(落ち着いた雰囲気のスタジオ。キャスターと鈴木先生が、モニターを見ながら神妙な面持ちで座っている。)


**キャスター:** 「山本あづささんの、まっすぐな決意の言葉でした。ご両親のお話、そして戴帽式の映像からも、彼女がいかに強い信念を持って看護の道に進んだかが伝わってきます。」


(キャスター、隣の鈴木先生に向き直る。)


**キャスター:** 「スタジオには、医療ジャーナリストの鈴木先生にお越しいただいています。先生、このあづささんの言葉、専門家としてどのようにお聞きになりましたか?」


**鈴木先生:** 「はい。非常に胸を打たれました。この短い言葉の中に、現代の看護師に求められる本質が、二つも凝縮されていると感じます。」


**キャスター:** 「二つの本質、ですか。」


**鈴木先生:** 「ええ。まず『患者に寄り添う心のケア』。これは言うまでもなく、看護の基本です。病気だけでなく、病を持つ『人』そのものを見るという、全人的なケアの視点ですね。多忙を極める医療現場では、時に流れ作業になりがちですが、彼女はキャリアの出発点で、この最も大切なことを見失っていなかった。素晴らしいですね。」


**キャスター:** 「なるほど…。」


**鈴木先生:** 「そして、もう一つが『医師を助ける存在でありたい』という言葉です。一見すると、補助的な役割と聞こえるかもしれませんが、これは全く違います。現代医療は、医師一人では成り立ちません。看護師、薬剤師、技師など、様々な専門家が連携する『チーム医療』が基本です。その中で、患者に最も近い存在である看護師が、医師の目が行き届かない細かな変化を察知し、正確な情報を共有する。それは、まさに医師を『助け』、医療の質を向上させる極めて重要な役割なんです。彼女はそれを本能的に理解していた。これは、単なる理想論ではなく、非常にプロフェッショナルな視点だと言えます。」


**キャスター:** 「若くして、そこまで深く看護という仕事を見つめていらっしゃったんですね…。」


**鈴木先生:** 「はい。この言葉からは、彼女の謙虚な人柄と、同時に、医療チームの一員としての強い責任感と誇りが感じられます。だからこそ、彼女の早すぎる死が、あまりにも惜しまれますね…。」


(鈴木先生、少し言葉を詰まらせる。キャスターは深く頷き、次の展開へ…)


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