ヒロインに転生したがイケメン共にモテなくても一向に構わん
いとこんどりあ
第1話乙女げぇむをやるつもりはない
わしはベニオ・ヨザクラ。花も恥じらう十七歳。平民。
趣味は里芋の煮っころがしと漬物作り。
どうやらわしは乙女げぇむとやらに転生してしまったようだ。
なぜわしが。どうして。文句を言いたいのに現にこんな場所に記憶を持って生まれてきてしまった。そういうけったいな場所は若いモンが行くべきだと思わんか。
そもそも乙女げぇむとはなんぞや。いや、孫がやっているのを少し見たことがあるからなんとなくわかる。
可愛らしい娘っ子や逝け面と乳くりあって助平するげぇむだろ。あれ、ちがったか。
棺桶に片足突っ込んでいたババアだぞ。孫娘がこの乙女げぇむをやっていたのをボケ防止に見ていただけの知識しかないのにうまく説明できるわけがない。
まあ、よーするに若い男女が逢引きをするのを楽しむ擬似娯楽というやつか。
しかし、解せんな。
わしは元90代の婆。孫が十人もいて第二の人生を謳歌していたはずなんだが、運転しながら接吻していたクソアベックの車がこちらに特攻してきよった。見事わしはあぼんしてしまった。
あのアベックめ。信号無視して接吻してんじゃない。
そのせいでわしはこんな畑違いな世界に来てしまったのだからな。孫息子がリアジュウ爆発しろと言っていた気持ちがようわかったものよ。
そして、目覚めたらこの通りわしはピンク色の髪のやたら綺麗なお嬢さんになっておった。つまりげぇむのヒロインという存在だ。
「やあ、ベニオさん。今日も可愛いね」
「ベニオちゃん、今日もエロいね。ドゥフフ」
「ベニオさん、どうかぼくちんとピー(放送禁止用語」
このべっぴん顔のせいで、通り過ぎる男共からの性的な視線がやたらと多い。このヒロインは胸も割とでかいので視線を胸に向けてくる馬鹿共が多い事多い事。思考回路が不純で軟弱者めが。
おばあちゃんそれモテ期ってやつだよ!ぁたしもモテたぃのにぅらゃましぃ!
と、ギャルな孫娘に言われるかもしれんが、元90代のばーさんがモテても仕方ない。
モテるっちゅー事は助平にもあうって事だぞ。
わしは永遠にじーさん一筋なんじゃ。勘弁してくれ。
とにかく、この目立つ長いピンクの髪を近所の床屋のじいさんに頼んでばっさり剃ってもらった。すっきり丸坊主姿の完成だ。
わしは元は山の寺生まれ。この髪型がしっくりくるんだ。
そしてこの大きすぎるキラキラした赤い目もよくない。これも男を寄せ付ける原因だ。だから目がやたらと小さくなるメガネをし、さらに加工を加えて不細工な見た目にしてやった。
両親には大層泣かれて勘当されそうになったが、これが現代女性の間ではブームなのよとホラを吹きまくって押し通した。
これで下心丸出しな男共は寄って来ないだろうし、目立たないはずだ。
あれ、なんか変に目立っちゃったか。まあいいか。
わしはヒロインだが乙女げぇむなんぞ元からやるつもりはないからな。
平民として普通に生きて、普通に自給自足生活をするつもり。
この世界は女が男に頼ってヒモにならないとやっていけない世界らしいが、幸いわしは生前山でポツンと自給自足生活をしていたので抜かりはない。
げぇむ通りならちーとで敵を倒すだとか、悪役令嬢と対決だとか、逝け面と恋に落ちるだとかいろいろあるらしいが、そんな面倒くさい日常は望んでおらん。
90代のばーさんは男に頼らずただ平穏に山で暮らしたい。それだけなんじゃ。
「ベニオちゃん……ど、どうしたのその髪型……。あと目が小さいし。ぶ、ぶっさ」
「あはは、これ最新の流行なんですよ」
「そ、そうなんだ……あ、おれ今から用事が」
「デートの約束はまた今度で」
「ば、化け物女」
男共は掌を返したように次々わしの元から去っていく。
わしの事が好きだったらしい
たかが髪を坊主にして不細工になったくらいで大げさだな。わしはこの髪型がスッキリしていいというのに良さがわからんとは情けない。
めそめそ泣くな!泣くのはおっかさんの前だけにしていろ!と婆時代の説教をしておいた。
「キャアア見て!
「げ、やべえ!」
「殺されるっ!逃げるんだぁ!」
「で、でも男らしくてかっこいいよなー」
「なー。おれ、あいつらに憧れるわ。怖いけど」
町を歩いていると、周りは騒がしくなった。今騒がれている愚連隊達が現れたようだ。愚連隊に恐怖を抱く者もいれば、若い男共は目をキラキラさせて「かっけぇ」と呟いている。
女からは野蛮だとかはしたないとか、線が細い王子スタイルが好きな令嬢からは不評のようだ。
そういえば孫娘がやっていた内容では、あんな血生臭くて男らしい筋肉もりもりの集団はいなかった気がする。追加でもされたのだろうか。
そんな奴らはバイク……ではなく、小型馬車を改造した自転車みたいなのを乗り、『パラリラパラリラ』とラッパを吹き鳴らし、他校の
リーダー格はキョウタロウって名前だったか。
名前がわしが生前愛した爺様と同じ名前なのが解せん。
貴族平民学校一の問題児で、事あるごとに犯罪行為で事件を起こし、反社のトップを親に持つという事で有名な極悪不良だそうな。
見た目は黒髪短髪の戦闘民族みたいなツンツンした髪型。盛り上がった大胸筋に極太の二の腕、大猿のようなでかい拳。身長は2mはある。
顔の目元や口元には傷があり、歴戦の修羅場を潜り抜けてきた名誉の傷だろうか。血のような赤いの瞳が恐さに拍車をかけ、ついたあだ名が大悪魔やら
見れば見るほど生前のじいさんにそっくりだなんて認めたくない事実だ。
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