第20話 パートを辞めた心境

 パートを辞めた。

 パパに

「パートを辞めました。」

 と報告した。

「え?そうなの?何かあった?」

 当たり前だけれど、聞かれた。浮気してキスして、不倫しそうで、相手は不倫の常習者でした、なんて言えるわけがない。

「店主の人と、うまくいかなくて。」

 と答えた。パパは、

「そうなんだ。」

 と一言だけで、深くは聞かれなかった。よかった。

 朝、子どもたちとパパを見送って。何もすることのない日がもどってきた。

 お化粧もしない、服も気にしない。短パンとTシャツ。下着もいつものシームレス。誰にも見せない、誰の目も気にしない。

 気楽だけど、満足感もない。お店にもどりたいって、ちょっとだけ思ってしまう。でもしようがない。


 ママが、パートを辞めた。正直、ほっとした。

 パートを始めてから、お化粧もして、服装も素敵になって、魅力的になった。でも、少し心がザワザワしていた。

 学校の職員同士が、不倫をしていた。その時、女性職員が言った言葉、

「私が、誘ったんです。夫とは2人とも教師で忙しくて、すれ違っていて、セックスレスにが続いていて・・・。さびしかったんです。」

 うちも、セックスレスだ。いつからだろう、ママの体に触れていないのは、仕事が忙しくて、帰るのも遅く、家に帰っても寝るだけ。土日も部活。教頭になったら、たまった仕事を片付けるのが土日。寝室も別にして書斎で寝るようにしてしまった。

 今さら、どうすればいいのか。照れくさいのもある。

 パート先で、ママが浮気するかもしれないという心配は、なくなった。いつもの服装、化粧っ気のない地味なママにもどった。

 これで安心だ。ハグやキスをしなくちゃ、というプレッシャーからも解放される。

 ママは、家族だから、今さら無理にすることもない・・・かな。


 私が、パートを辞めてから、パパが私に触れようとすることもなくなった。夫婦なのに触れ合わないパパと私。ただの家族、同居人。

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