第49話 守るから
危うく落としそうになったスマホを、ギリギリで持ち直す。
「マジ、か」
何故親父が。本来なら、佐竹が迎えに来るはずだった。それが……しかも報告は当日って、親父らしい。
可能性として高いのは、俺の何かに気がついたこと。情報漏洩、霊の蔵匿、探せばキリがない。
「ふぅー」
落ち着け。とにかく今は、このことを叔父に伝えよう。
そして、恐らく俺は、叔父を味方に付けなければならない。まだ思考は纏まっておらず、明確な作戦など考えてもいないが、少なくとも、親父と霊を接触させてはいけない、ということは分かる。
そのためには、親父を相手にすると同時に、二人もまた曽我家から引き離さなければならないのだ。だが、一体どうやって……。
◆◆◆◆◆◆
「な、なんやて!?」
叔父が机を叩き、身を乗り出す。その後、叔父の顔はみるみると怒りに染まっていく。
「チッ、あんボケ」
叔父と親父の仲は険悪らしい。あまり相手のことを話題に出したことが無い。
「叔父さん、一つ良いですか?」
「……」
「ん?」
先ほどまで親父の悪態をついていた叔父が、俺の言葉で黙り込む。漏らした声には怒気が含まれている。
「俺の味方にはならなくて良いんです。ただ、俺の協力者になってくれませんか?」
「何が違う言うんや?」
「貴方は俺の思想にも、菫さんの思想にも賛同できない。つまりは、杏と瀬奈をそう簡単に死なせるわけにもいかない。俺たちの利害は一致しています」
「あん二人をワシが霊蔵から離せっちゅうことか?」
「はい、その通りです」
「……」
叔父は再び黙り込む。
叔父の優柔不断さは、もしかしたら長年の経験から来るものなのかもしれない。俺の様な子供とは違って、もっと先が見えているのかもしれない。
だが、それは俺の思想が間違っているということでは無い。少なくとも、叔父は俺の考えに半分は賛同しているのだ。大人なんて関係無い、俺は自分の信じた道を行く。
「……分かったで」
叔父は立ち上がり、杏の部屋へと向かう。
成功、したのだ。
成功したはずだ。
でも何故か、俺はその背中と共に、叔父もまた俺から離れて行ってしまう気がした。
◆◆◆◆◆◆
それから数時間。チャイムが鳴り、俺は急いで玄関へ向かう。
親父の目的は分からない。
しかし、二人が危険だということは分かる。
だから、何が何でも俺があの二人を守らなければならない。
そうすれば彼女も俺を見直して、白銀さんに戻ってくれるはずだ。
杏も、瀬奈も、今はちょっと疲れてしまっているだけだ。時間が経てば、きっと俺が正しいことを理解できるはず。
また、日常を取り戻せる。
俺はカッターナイフを右ポケットに、玄関の扉を開けた。
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