第22.5話 自尊心

※こちらは番外編ではありません。22話の終盤にに入れても、23話の冒頭に入れるのもしっくりこないので、22.5話ということで投稿しました。


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「何であんなことしたの」

特徴的なものはこれといって無い住宅地、その道中で白銀さんに話しかけられた。

ここは、以前天海一家が住んでいたマンション近くの住宅地であり、近くには十階建てのマンションが見える。

叔父と杏はこの道を先行していた。


「つい」

言い訳も考えたが、それを言っても彼女相手には意味が無いと理解している。

だから俺は、簡潔に答えた。

例え感じが悪くてもこうとしか言えないし、これ以外の言葉も出てこない。

白銀さんは嘆息し、短いスパンで俺に踏み込む。

「分かるよ、焦る気持ちは。でも、だからってあれは無いでしょ。杏ちゃん、痛がってたよ」

「すみません」

息が詰まって、上手く言葉が出せない。

これだけの晴天だというのに、この場の空気はあまりにも重い。

自分でも、何がなんだか分からなかった。これまで頑張って自分を騙してきたが、俺は今でも、この選択が間違いな気がしてならないのだ。

霊媒師なのに、目の前にいる霊を見逃している。それは絶対に、間違っている行動。

でもこうするしか無くて、だからせめて努力をして。気がつけば、俺は杏のことを何も考えてやれてなかった。自分の都合を押し付けて、勝手に焦って、これじゃ完全に一人芝居だ。

自分の考えがまとまらない内は、言い訳をする気にもならない。というか、今回は完全に俺に非がある。何も言えないのは、当然だ。


「霊斗もちゃんと謝って、杏ちゃんが許したからそんなに長ったらしく責めるつもりは無いけど、とにかく、霊斗はもう少し周りを見て。

どんなに焦っていても、人が嫌がる様なことはしない」

まるで小学生に言い聞かせる様な口調だ。

いや、俺のやったことと、俺たちの年齢差を考えれば必然的にそうなるか。


「はい、すみません」

自分が情けなかった。

結局俺は、何もできてない。むしろ、何回もやらかして、叔父と白銀さんに迷惑をかけてしまっている。だから、俺も何かしなければ


「霊斗と私の年齢差は六歳も離れてるの。方や中坊でこっちは二十歳。おじさんなんて、私の二倍以上も生きてる。だから、絶対に一人で抱え込まないで。霊斗が迷ったら、私たちがサポートするから」

その言葉は頼もしかった。

そうだ、俺はまだ中学生なんだ。誰かに頼らなければ、むしろ余計にミスをしてしまうかもしれない。

だから本来は、黙って頷くべきなのだろう。でも、それは嫌だった。

俺も何かをしなければいけない。しなければいけないのに、何もできない。つまりそれは、俺の存在価値そのものを否定されているということだ。

本人にそんな意図は無くても、少なくとも俺はそう感じた。

だから頷けなかった。その分迷惑をかけるだけなのに、それを俺のちっぽけな自尊心が邪魔をしている。


俺は俯いたまま、ただ白銀さんの後をついて行った。唇を、血が出るのでは無いかというほど強く噛み締めながら。

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