バディ変更・・・?

本部赤坂保安署 ~第一特命巡視捜査隊分駐所~



「「「お! 毘乃木おはよぉー」」」


 「おはようございます」

 

当番明け組が一角で固まってて見るからに眠そう。もしや現場急行が頻回な夜だったのかもしれない。


 「毘乃「あとでッ。ごめんなさい」


私は隊長室へ向かう気でいたため、強め口調になってしまって声をかけた男性は荷物を抱えたままおずおず引き下がる。「どうした?」「あのクリアファイル人事?」などと、ザワついてる最中に岡本先輩がやってきたため取り囲み質問の嵐。


 「え? いや俺、変なこと言うてへん……ほんまですって!! それはすんません。ただ毘乃木にはちょっとしたお願いを。本当に」


「____アハハハハハハハハッ…ハハハ!!!!!!!」


 全員、隊長室へ顔を向ける……この感じは。察した各々が散っていく。

岡本先輩は「解決しそうやね」と安堵のため息をついた。

 


 「ハハハハッだよなぁ〜! ごめんごめんッ!!」


 …………そんな笑います?


 茶色いソファで大笑いするガタイの良い50代中老の男性____雪園ゆきぞの 正雄まさお

第一(第七)巡視特命捜査隊の隊長、私の直属の上司だ。

 第1ボタンを外したYシャツの首元から褐色肌と顎髭……黒縁メガネをクイッと直すと「嘘じゃないぞ」こう言い切る。それじゃあ本当なんだ。



 私につく……初めての問題アリ方の新人さん…つまり、ガミガミ叱らなくていいッ!! 口酸っぱい注意も必要以上の注視もいらないッ!!!

岡本先輩、嘘つきじゃなかったぁッッ!!!!!……疑ってすみません…



「しっかし、お前にかなり〈爆弾〉を回してたんだなぁ」


〈爆弾〉とは、素行や犯罪捜査において細やかな助言や指導を必要とする新人を指す隠語だ。

「今後はちゃんと他のO担にも回すようにするから」と、雪園隊長は言ってくれた。是非よろしくお願いします。って、ここで会話終わらせちゃいけないでしょ。1番大事なことを聞かなくちゃ。


「……アメリカから転属してくるって事実ですか?」


「ん? あぁ! 岡本から聞いた? 本ッ当にすまん!!

 突然知らせて。出してもらった育成計画表ダメにさせるなぁ……実は今回の件、からのゴリ押しで」


 私たち巡視特命捜査隊と捜査一課をはじめとするナンバー課の違いは、組織のトップへたどり着くまでに部長といった上位役職が明確に存在しているか否か。

 私たちには存在していない____トップが兼任するからだ。階級でいうと保安総監が警視監を担ってる。

 それは、テロを含むG事案に即時かつ迅速に対応するための簡略化。誰かを挟んでモタつけば、救える命が1つ確実に減るのだから。



「…総監にゴリ押されたらそりゃ…………大丈夫です!! 私、頑張りますので。

計画表も来週までに提出します」


「ごめん」


 泣かないでください。

 ここは先輩後輩の関係性より階級が物言う世界ですし、仕事なら私はどこまでも頑張れるタイプなので…………ハンカチいります?


「すまんッ……ま、初めてのルムチルドレン同士だろうけどぉ、1年間よろしくな」


 

「はいッ!」____って返事してしまったものの……仕事はそんな甘くない。23時を回った今宵の私が自宅で苦しむことになるなど、朝の私は気づいていなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る