功徳アプリ
ヒロロ✑
第1話 功徳アプリ
闘病している母を救わんと様々に手を尽くした彼は、たまたま見た広告に胡散臭さを感じながら、無料ならと、その謎のアプリをスマホにインストールした。
それは功徳を積むアプリと謳われていた。
彼は必死に課されるミッションを果たした。
落ちている一円玉すら見逃さず交番へ届けたり、一日一善のつもりで少しでも母の力になりたかった。
助けたい、その一心だった。
しかし人の命を助けるという功徳は、こなすミッションの難易度も、どんどん高くなっていった⋯⋯。
最後にして最高ランクの神仏クラスと呼ばれている功徳が欲しければ、今まで積んできた福徳を見ず知らずの他者へ全て与えなさいと画面越しに出てきた。
彼は苦悶の表情を浮かべ、スマホを持つては震えていた。
考えて考えて主人公は結果、時間をかけて悩んでも母の残りの命は短いと悟り。
彼はつい欲をかいて、他者に施さなかった。
また一から功徳を積むにはタイムリミットは短すぎたのだ。
すると、スマホから着信が入った、画面には病院の履歴が表示されている。
恐る恐る出ると、最愛の母が死亡したという知らせだった。
なぜだ! と混乱しつつ、通知音で我に返る。
功徳アプリからメッセージが来た。手に汗かいたままゴクリと唾を飲む。
画面を開いてみると。
「アナタに福徳を他のものに与えなさいと課したミッション先は、実はアナタの闘病中の母親宛でした。もしYESとタップしていたら助かっていたでしょう」
と⋯⋯すかさず彼はスマホを地面に叩きつけた。
しかし、ふと思い直してスマホを見る、割れた画面越しに功徳アプリの更なるメッセージが追加された。
「スマホを叩きつけましたね。まだアナタの積んだ功徳は少なからず残っていたのに⋯⋯ラストチャンスの慈悲にも気づかないから最愛の人を亡くすのです。なおこのメッセージと共にアナタの積んだ功徳は全て消え失せます。ご利用ありがとうございました」
無表情の彼はそのまま勢いよく車道へ飛び込んだ──
功徳アプリ ヒロロ✑ @yoshihana_myouzen
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