第一王子との戦い

王城の玉座の間。重厚な扉が吹き荒れる風で軋み、外部からの罠が形を表している。闇の裂け目から漏れる黒い魔力が、空気を重く濁らせた。

第一王子が杖を構え、歪んだ魔法の光を纏う。

リリアーナはその対面に立ち、手にした魔杖を軽く震わせながら、声を張る。

「第一王子、これ以上の暴走を――止めて。」

第一王子は嗤ったように歯を見せる。

「止め? お前が私を捨てたことの報いを、この国で、いや、この世界で見せようとしているんだ、リリアーナ。」

第一王子が一歩前に出る。

「殿下、お願いです。これ以上の血は――」

だが第一王子はアルベルトを遮るように手を振る。

「騎士風情が口を挟むな。お前も裏切ったではないか。」

リリアーナの心臓が跳ねる。痛みと怒りと、それでも理性の糸を手繰り寄せるように。

「裏切りではない。あなたを信じていた。だからこそ、こんな日が来るなんて思いたくなかった。」

そのとき、闇の魔導師風の人物(黒幕)が姿を現す。苦笑を浮かべながら杖を掲げる。

「愚かだ、第一王子殿。あなたが真の力を持たぬことを知りながら、私を恐れもせずに進んだのだな。」

エドワルドが声を震わせながら問う。

「お前が――裏で手を引いていたのか!」

黒幕は頷く。

「そうだ。そしてあなたの“力”は偽物だった。歪んだ魔術を私が作り、あなたを操し、王国を混乱に陥れさせた。」

リリアーナの顔に氷のような静けさが訪れる。

「それなら、あなたの縛りを断つ。私は本物の継承者として、この呪縛を解く。」

アルベルトはリリアーナの傍らから結界の魔法を張る。

「リリアーナ、気を付けて!」

刹那、第一王子の杖から黒い稲妻が放たれる。だが光の結界がそれを受け止めて弾く。

リリアーナは深く息を吸い、古代魔法――“時環の理”の真の力を呼び起こす。

闇の裂け目を引き裂く白銀の光。

第一王子の笑みが徐々に歪み、魔力の根が枯れていく。

第一王子は苦痛に顔をゆがめ、杖を落とす。

「どうして…こんなにも――」

リリアーナは手を伸ばし、エドワルドに向けて声を震わせる。

「答えを選びなさい。あなたは私を捨てた王子として生き続けるのか、それとも、あなた自身の心で歩み始めるのか。」

エドワルドは荒い息を吐き、膝をつく。

「リリアーナ…私にはもう、何が正しいのかわからない。でも――お前を傷つけた過ちだけは、認める。」

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