コラム①喪黒博士のマグロ人生
博士紹介
喪黒博士(本名不詳)は、十代の頃からマグロに心を奪われ続けてきた研究者である。
16歳の時に漁港で見た一本のマグロに衝撃を受け、そのまま学校を中退。以来、世界各地の海を放浪し、独自の観察と記録を積み重ねてきた。博士は現在89歳。公式な学会に所属したことはないにもかかわらず、各地の漁師や一部の研究者からは“生き字引”と呼ばれている。
ただし、その観察記録の多くには通常の科学では説明のつかない描写も多く、博士の証言をどこまで信じるかは読み手に委ねられている。
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インタビュー Q&A
Q. これまでで最も衝撃的だったマグロは?
A. 「“月蝕マグロ”だね。新月の夜、ナディア環礁沖で見た。体は深い群青で、光を反射するたびに星座のような斑点が浮かび上がった。船員たちは震え上がり、誰一人口を開こうとしなかったよ。」
Q. 博士の好きなマグロ料理は?
A. 「握り寿司だ。余計な飾りはいらない。ただ、その一貫を食べる時、私はいつも“魚の記憶”を口の中に刻みつけている。私にとって食事は標本採集と同義なんだ。」
Q. 研究の中で最も恐ろしかった体験は?
A. 「冷凍庫で三日眠っていたはずの標本が、瞬きしたことがある。錯覚かもしれないが……その夜から、私は目を閉じるのが怖くなった。」
Q. 今後の目標は?
A. 「“北冥の巨鮪”を見つけることだ。文献によれば、古代より海そのものと共鳴しながら泳ぎ続ける祖魚だという。もし出会えたなら、私は研究者ではなく、海そのものの一部になれる気がしている。」
博士の言葉で締めくくり
「僕はね、マグロになりたいんです。その為に生まれてきたんだ。」
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